自分の応援したい自治体に寄付をして返礼品を楽しむことができるふるさと納税。
寄付後の申請方法には「ワンストップ特例申請」「確定申告」の2種類があることはご存知でしょうか。
どちらも控除限度額に差は生じないため、お得さ、は基本的には変わりません。

今回はどちらの方法が、簡単か、あなたにあっているか、なぜ勘違いされがちかを解説していきます。
ワンストップ特例申請も確定申告も控除限度額は同じ
ワンストップ特例制度と確定申告、どちらも控除限度額は同じです。
なぜなら、控除限度額はあなたの年収や家族構成、住宅ローンなどの控除によって決まります。
そのため、申請方法によって控除限度額に差が出ることはありません。
わかりにくい、るさと納税の仕組みから、ワンストップ特例制度と確定申告の違いまで解説します。
ふるさと納税の仕組み
ふるさと納税とは、自治体に寄付することで自己負担2,000円で「寄附金控除」を受けられる仕組み。年収によって決められた控除限度額分が所得税や住民税から控除されます。
また、寄付した自治体からは返礼品を受け取ることができます。
返礼品のジャンルはさまざまで、果物や乳製品、加工肉などの食料品や、トイレットペーパ・ティッシュなどの日用品。ほかには家電製品や美容品、旅行チケットなども返礼品として扱われています。
たとえば、年収300万円の方が28,000円分の寄付をおこなった場合、控除額は26,000円、自己負担2,000円で返礼品を楽しむことができます。
よって、ふるさと納税は、自己負担2,000円で寄付金控除を受けられます。
所得税・住民税の控除割合
ふるさと納税の申請をワンストップ特例申請と確定申告でおこなった場合、所得税・住民税の控除される割合が異なります。
それは、控除適用される税金が異なるからです。
では、ワンストップ特例申請と確定申告の違いを解説していきます。
確定申告とは、1月1日~12月31日までを課税期間としたときに納付すべき所得税額を確定するためのものです。
個人事業主または副業をしている方(1月1日~12月31日までの所得が48万円以上)、年収2,000万円以上の会社員が対象です。
ワンストップ特例申請とは、確定申告が不要な給与所得者(会社員など)またはふるさと納税の寄付先が5自治体以内であれば、ふるさと納税の確定申告が不要になる制度です。
ワンストップ特例申請は、住民税のみが控除対象。確定申告をすることで、住宅ローンや医療費控除などの税金も控除対象に加えることができます。



簡単さで選ぶなら、ワンストップ特例申請がオススメ。
どちらの方法で申請しても控除限度額は変わらないため、基本的にはワンストップ特例申請で問題ありません。
控除されるまでの流れ
まず、1月1日~12月31日までの期間で寄付、その後申請締め切りまでに必要書類を提出します。
提出締切は申請方法により異なります。
1月10日までに自治体から届いた書類で申請(特約申請書とマイナンバーカードおよび申請者本人の確認ができる書類)
3月15日までに住所地の所轄の税務署に寄付を証明する書類(受領書)を添付することで確定申告が完了します。
ちなみに、住民税の控除は6月から、所得税の還付は確定申告後1ヶ月〜2ヶ月後となります。そのため、上記のタイミングになってから「しっかり控除を受けられたか」を確認することとなります。
控除限度額の確認方法
ふるさと納税をする前に、控除限度額の確認をしていきましょう。
控除限度額は、あなたの年収と家族構成でチェックできます。



だいたいの控除限度額をイメージしたい!という人は、以下の表を参考にしてください。
- 【年収300万円の人】28,000円(控除額26,000円、自己負担2,000円)
- 【年収400万円の人】43,000円(控除額41,000円、自己負担2,000円)
- 【年収500万円の人】61,000円(控除額59,000円、自己負担2,000円)
さらに詳しく控除限度額を確認したい人は、控除限度額シミュレーターがオススメ。あなたの想定年収をシミュレーターに入力するだけで簡単に控除限度額がわかります。



詳しく知りたい方は「ふるさと納税の限度額を超えたらどうする?対処法と控除額の計算を確認」の記事も参考にしてください。
小数点の残し方で数円の誤差が出る
ワンストップ特例申請と確定申告、どちらも基本的にはお得度に差はありません。
しかし、厳密に計算式を確認すると控除額に数円の誤差が生じます。
具体的な例をもとにご紹介します。
【ワンストップ特例申請をした場合】
年収300万円の人(所得税率10%)が28,000円寄付した場合、控除額は25,947円になります。
- 住民税基本控除 = (28,000円 – 2,000円) × 10% = 2,600円 … A
- 住民税特例控除 = (28,000円 – 2,000円) × 79.79% = 20,746円 … B
- 申告特例控除 = 20,746円 × 10% ÷ 79.79% = 2,601円 … C
- 控除額 = A + B + C = 25,947円
【確定申告をした場合】
年収300万円の人(所得税率10%)が28,000円寄付した場合、控除額は25,946円になります。
- 住民税基本控除 = (28,000円 – 2,000円) × 10% = 2,600円 … D
- 住民税特例控除 = (28,000円 – 2,000円) × 79.79% = 20,746円 … E
- 所得税控除 = (28,000円 – 2,000円) × 10% = 2,600円 … F
- 控除額 = D + E + F = 25,946円
上記の計算式により、ワンストップ特例申請をした場合は自己負担額が2,053円(28,000円‐25,947円)、確定申告をした場合は自己負担額が2,054円(28,000円‐25,946円)となります。よって自己負担額の差は1円変わりますが、お得度に差はありません。



お得度は変わりませんが、ワンストップ特例申請の方が手続きが簡単であるため、あなたの手続の負担を軽減できますよ。
控除されているか確認する方法
ふるさと納税をした結果、正確にいくら控除されているかを確認する方法は3つあります。
- 住民税決定通知書をみる
- 自治体の窓口に問い合わせる
- 通帳で所得税還付金額をみる(所得税のみ)
住民税決定通知書(納税通知書)とは、確定申告や年末調整情報をもとに計算される正式な通知書です。納税者には直接または会社を通して毎年5月に送付されます。
納税通知書の「摘要」欄の「寄付金税額控除額」が -2,000円になっていれば控除されていています。 – 2,000円を超えていた場合は超過分が自己負担になります。


納税通知書は毎年5~6月に届くため、ふるさと納税をしてから5〜6ヶ月経ってしまいます。早くチェックしたい方は、自治体に問い合わせるか口座を確認することをお勧めします。
自治体に問い合わせても、控除されているかどうかを確認することができます。
また、電子申告による確定申告を行った場合、3週間程度を目安に最短2週間程度所得税が還付されます。そのため、最短2週間で控除を確認できます。



いずれにせよ、控除をすぐに確認したい場合、2〜3週間はかかってしまいます。
ふるさと納税でワンストップ特例申請・確定申告で迷ったときの注意点
ワンストップ特例申請と確定申告、どちらが良いか迷ったときは、「どちらが簡単?楽?」「どちらが自分にあっている?」といった点で考えていきましょう。
申請の手続きはワンストップ特例申請の方が楽
簡単さで考えると、ワンストップ特例申請の方がオススメです。寄付した自治体から届く書類と、本人確認書類を提出するだけで申請が完了します。
ただし、ワンストップ特例申請をできる人は限られています。それは「もともと確定申告をする必要がない人」です。
以下に当てはまる人はワンストップ特例申請が可能です。
- 個人事業主ではない(会社勤め)の人
- 年収2,000万円を超えない人
- 医療費控除を受けることができない人
- 寄付した自治体が5自治体以内の人



確定申告をする際は、源泉徴収票やその他必要書類をまとめる手間が発生します。そのため、ワンストップ特例申請の方が手軽に簡単に申請可能です。
控除限度額を超えないようシミュレーションする
ふるさと納税の申請方法は2パターンあるため、どちらがお得か迷うと思います。けれど、なにより重要なのは「控除限度額を超えないこと」です。
控除限度額を超えた寄付金額は自己負担になります。つまり、自治体に寄付しただけ。超過分にお得感はありません。
ふるさと納税を確実にお得に活用するためには、「控除限度額シミュレーター」で自分の控除限度額をしらべましょう。あなたの年収や家族構成、住宅ローンなどを入力するだけで控除限度額がわかります。



申請方法に関わらず控除限度額は同じなので、ふるさと納税をしようと思っているあなたはまず控除限度額シミュレーションをする必要があります。
控除限度額を超えた場合の対処法
万が一、控除限度額を超えた場合はどのように対処すべきでしょうか。選択肢は以下の2つです。
- 再度シミュレーションをする
- 確定申告をする
まずは、再度控除限度額シミュレーションをしましょう。想定していた年収より実際の年収が低い場合は控除限度額を超えている可能性があります。
【1月の給与所得を30万円とした場合】
この段階で単純計算をおこなうと
- 年収360万円(300,000円 × 12ヶ月)と想定
- 控除限度額 = 51,755円(うち2,000円が自己負担額)
- 自己負担額2,000円を引いた49,775円を寄付
【実際の2月以降の給与所得は25万円】
年収がある程度わかった状態で計算をおこなうと
- 年収305万円(30万円 + 25万円 × 11カ月)
- 控除限度額 = 39,646円(うち2,000円が自己負担額)
- 49,775円の寄付を行った場合、実際の控除限度額との差額である10,129円が自己負担となる(うち2,000円はもともとの自己負担分)
上記から、想定年収が実際の年収を上回る場合は自己負担額が2,000円を超える場合があります。
再度確認してもやはり控除限度額を超えている場合は、確定申告をしましょう。ワンストップ特例申請をしていた場合は住民税のみから控除されますが、追加で確定申告をすることで所得税でも控除を受けることができます。
詳しく知りたい方は、「ふるさと納税の限度額を超えたらどうする?対処法と控除額の計算を確認」の記事を参考にしてください。



ふるさと納税の控除限度額を超えてしまった分は、原則自己負担となります。少しでも自己負担額を軽減するため、上記の方法を試してみてください。
住宅ローン控除対象者はワンストップ特例申請で得する可能性あり
住宅ローン控除を利用する方は、ワンストップ特例制度の方が得する可能性があります。
それは、ワンストップ特例制度では住民税が控除対象となるからです。
年間で受けられる所得税・住民税の控除上限額は決まっています。
そのため、確定申告をおこなうと住宅ローンの所得税控除分と重なり、控除限度額を超える可能性があります。
上記を踏まえて、以下の両方に該当する人はワンストップ特例申請をオススメしません。
- 住宅ローン控除可能額が所得税額を超える
- 住宅ローン控除可能額が住民税から控除できる上限(138,500円)よりも多い
年収500万円、住宅ローン4,000万円(住宅ローン控除400,000円 … A)の人を例に解説していきます。
上記より、ふるさと納税した方が住宅ローン控除額が7,700円低くなります。そのため、住宅ローン控除対象者は、控除額に注意することで損することを防ぐことができます。



住宅ローン控除可能額が所得税額を超え、住宅ローン控除可能額が住民税から控除できる上限(138,500円)よりも多い人がふるさと納税をしたい際は、控除額に要注意です。
詳しく知りたい方は、「ふるさと納税の控除限度額シュミレーションを年収から家族構成別に解説」の記事を参考にしてください。
ふるさと納税のやり方
それでは、ふるさと納税をしていきましょう。以下の手順がオススメです。
- 控除限度額シミュレーターを使用して、想定年収から控除限度額を確認
- ふるさと納税サイトにて、寄付したい自治体を決める
- 寄付
- 各自治体から届く書類を控えておく
- ワンストップ特例申請または確定申告にて申請をおこなう
確定申告のやり方
以下の必要書類を用意し、3月15日までに住所地の所轄の税務署に申請しましょう。
- 寄付金受領証明書
- 対象期間の源泉徴収票
- 還付金受け取り用口座番号
- マイナンバーカード(通知カード+本人確認書類)
源泉徴収票とは、年内に会社から支給された総額と、労働者が支払った所得税額が記載された書類です。12月の給与明細と共に受け取ることが一般的です。
確定申告に必要な書類が集まったら、翌年の2月16日~3月15日まで税務署に提出しましょう。
2018年以降はオンラインでも確定申告が可能となりました。お手持ちのスマホやタブレットによる電子申告サービス(e-Tax)の方法については、国税庁の記事を参考にしてくださいね。
ワンストップ特例申請のやり方
各自治体から届いた書類+以下の必要書類を用意し、1月10日までに各自治体へ送付しましょう。
- 特約申請書
- マイナンバーカードおよび申請者本人の確認ができる書類(マイナンバー通知カードのコピーまたはマイナンバーの記載されている住民票の写し+運転免許所のコピーまたはパスポートのコピー)



ワンストップ特例申請は、各自治体から届く特約申請書と、申請者本人の確認ができる書類のみで申請可能です。確定申告と比べて簡単にできる申請方法です。
特約申請書はどこからダウンロードしても同じです。書類の見本はこちらをご確認ください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は、「どの方法で申請するのが良いのか」「ワンストップ特例申請と確定申告の違いは何か」を紹介いたしました。
だいたいの人はワンストップ特例申請がオススメですが、控除限度額を超えて寄付してしまった人は確定申告がオススメ。住宅ローン控除対象者は住宅ローン控除額によって、ふるさと納税をしない方がいい人もいます。
ふるさと納税をした方がいいか、しない方がいいか、も控除限度額シミュレーションをおこなうことで確認できます。控除限度額シミュレーション時には、自分の年収+ふるさと納税以外の控除金額も入力すると、より正確な控除限度額を確認できます。



この記事を読んで、みなさんの疑問や不安が解消され、ふるさと納税やってみよう!と思ってもらうきっかけになれば幸いです。