ワーク・ライフ・バランスとは仕事と自分の時間を個人が自由に選ぶこと

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少子高齢化や労働力人口戚少などに伴い、働き方が多様化する昨今、ワーク・ライフ・バランス(work-life balance. 以下、WLB)への関心が高まっています。

WLBと聞くと「仕事とプライベートの充実」「私生活を重視した働き方」などの認識をもつ人が多いのではないでしょうか。

働く人にとってありがたい言葉のように思われがちですが、仕組みとして確立するには仕事を完結させられる従業員一人ひとりの能力が必要不可欠です。

関西大学社会学部でWLBの研究を行う森田雅也教授は、WLBでは境界決定の自律性が重要と指摘した上で「部下と上司の信頼関係の構築や制度的、非制度的支援を整えるなど、より良い仕事の進め方を考えなければならない」と話します。

仕事と自分の時間を個人が自由に選ぶこと

ワークライフバランス

― まずは、WLBとは何か詳しく教えてください。

現状、研究者の間でWLBの概念や解釈は多様であると言わざるを得ないでしょう。私の専門領域である経営学の観点からすると、WLBとは、「個人が仕事と自分の時間を自由に選ぶこと」をできる限り組織が認めていくことだと私は考えています。

私たちは、会社という組織の中で仕事をしますが、始業時に境界を越えて組織の中に入り、終業時に境界を越えてプライベートの時間に戻ります。休暇を取るとき、終える時も同様です。こうした境界を越えるという行為をしやすくすること、つまり境界を決定する自律性を組織が働く人たちに認めていくことがWLBの本質だと私は考えています。

労働力不足とワーク・ライフ・バランスの関係性

― なぜ、WLBが重要視されるようになったのでしようか?

労働力が不足すること、もう少し正確に言うと、これまでのような働き方をする人たちが減ってきたことが大きな要因だと思います。

かつては、年功的な雇用システムの下、無制約社員と呼ばれた男性基幹労働者が主たる労働力でした。彼らの働き方や生活は良くも悪くも会社中心であり、それは家事など仕事以外のことを担ってくれる人がいたから成り立ったものです。会社人間という言葉もありましたが、現在では、こうした働き方をできる人も、したい人も減ってきています。

さらに将来を見越せば、労働力人口が減っていくことが推計されていますから、会社は多様な人々に様々な働き方を提供することを考えておく必要もあります。

「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」が策定されたのは2007年ですが、それ以前からWLBにつながる動きはあったし、研究もおこなわれていました。例えば、1990年代半ば以降は専業主婦世帯よりも共働き世帯が多くなっており、今では共働き世帯は専業主婦世帯の2倍以上です。また、1985年の男女雇用機会均等法の制定、1987年の労基法改正による法定労働時間の週40時間化、フレックスタイム制や裁量労働制の導入、1995年の育児・介護休業法の改正・制定など、法整備も進んでいました。

バブル崩壊を機に成果主義へとシフトしたことも影響しているでしょう。仕事の成果が重視されるようになれば、職場に居ることよりも、仕事の結果を出すことや生産性をあげることに一層目を向けられるようになります。ICTが発達したことで、時間と空間を共有しなくても仕事を進められるようになってきたことも大きいでしょう。

ワーク・ライフ・バランスに取り組むメリット

WEB会議ツールでミーティング

― 先ほど生産性というお話がありましたが、WLBに取り組むことで企業にとってどんなメリットが期待できるのでしようか?

WLBに取り組むことで働く人たちの満足度が上がるというのは、さまざまな調査でも明らかになっています。もちろん、満足度の向上が生産性の向上に直結するわけではないので、生産性を高めるにはさらなる仕組みが必要とはなりますが。

また、従業員一人ひとりのニーズに合わせた働き方を選択できる仕組みを整えることで、優秀な人材確保にもつながる可能性も高まります。

さらに、今、WLBに取り組むことは、将来のためにも必要でしょう。10年先、20年先にWLBに取り組んでいない会社が社会的に認められるかというと、それは難しいと思います。古い話ですが、公害などの環境問題、情報開示、女性の活躍推進なども、当初は「そんなことをやって何の得になる」という声がありました。しかし、現状はどうでしょう。それらに取り組んでいない会社がありますか。WLBも同じようになると思われますから、今、取り組み始めることが重要です。

―― ただ、WLBを仕組みとして確立するには従業員全員が一定の成果を出せる仕組みつくりが必要になりますよね。

そうですね。WLB施策を上手く運用するには、 制度的支援、非制度的支援、文化の変容、仕事の再編成が必要だと考えています。まず、育児休業制度などのWLB関連制度を整えるのが制度的支援です。制度化することで従業員は様々な施策を利用しやすくなります。これはかなりの会社で既になされていると思います。

次に、非制度的支援とは、WLB施策を利用しようとする従業員を支えるような上司や同僚の行動です。こうした行動の変化が、「お互い様」とか「困っている人は助けよう」という意識を高め、WLBは組織にとって良いことだと考えるように組織の雰囲気を変えていきます。これが文化の変容です。

さらに、仕事の再編成、つまり仕事の進め方を変えることも必要です。WLBに取り組むと、いつでもみんなが居る職場ではなくなります。それなのに、それまでと同じ仕事の進め方をしていては残った人たちの負担が増えるばかりです。ICTの活用や権限の委譲など再編成の方法は様々ですが、組織にあった方法でそれを行うことが大切です。

ワーク・ライフ・バランスを取り入れ働き方を選べる環境へ

組織が境界決定の自律性を働く人たちに認めていくことは重要ですが、同時に、自由には責任が伴うことを働く私たちも忘れてはいけないでしょう。自律性を主張するばかりでは、非制度的支援や文化の変容が起こりにくくなります。当たり前のことですが、組織が協働で成り立っていることは、WLBに取り組む組織でも変わりはありません。

上司は、自分の部下がWLB施策を利用しようとするときは、必ず前向きな言葉をかけてあげてください。他のメンバーもそれを見ています。WLB施策を利用してもいいんだ、という安心感を醸成していくことが大切です。

部下を信頼しているという気持ちが伝われば、仕事のやりがいや責任感を高めることにつながり、WLBへの取り組みが良い方向に動き出すと思います。

森田 雅也 関西大学社会学部教授

関西大学森田教授

三重県生まれ。神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程修了。博士(経営学)。
著書として、『チーム作業方式の展開』(単著)、『経験から学ぶ人的資源管理〔新版〕』(共著)、『現代 人的資源管理:グローバル市場主義と日本型システム』(共編著)など。
兼職として、日本学術会議連携会員、大阪市男女共同参画審議会委員など。

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