初めての家売却で不安!かかる期間・費用は?売却の流れと業者選びの注意点
「家を売却したい」と思ったら、まず何から始めたらよいのでしょうか?
不動産会社に勤めている方ならその手続きに慣れているかもしれませんが、一般的に「家を売る」という行為はそんなに多く経験できるものではありません。
ほとんどの方が初めてのことのはずです。
いきなり不動産会社に連絡をしてもよいのですが、安心して不動産売却の手続きを進めていくためにちょっとだけ予習をしてみましょう。
特に不動産売却には法的な手続きから税金や手数料などの費用に関することが多く絡みますので、損をしないためにも、家を売却するための流れとその注意点について把握しておきましょう。
目次
家を売るための流れ、おおよそのスケジュールを知ろう!
家を売却するにはさまざまな下調べが必要です。
この準備が悪いと、思わぬ出費で痛い思いをしたり、不動産の売却価格が思った以上に下がってしまったり、というような損をしてしまうことも少なくありません。
家売却の大まかな流れとその期間
不動産売却における無用のトラブルを避けるためには、実質的には不動産会社に売却を依頼する手続きとなるのが一般的です。
家売却を会社に依頼するまでの流れ
ステップ | 項目 | 詳細 |
---|---|---|
1 | 物件相場のチェック | ・信頼できる不動産業者に事前相談する ・不動産一括査定サイトを利用する ・不動産ポータルサイトで近隣の売り出し価格を調べる |
2 | 必要書類の準備 | 不動産の売却に必要な書類を準備する |
3 | 希望売却条件と業者選び | ・売却希望価格を決定する ・いつまでに売却する必要があるのか、 最低売却ラインを決める ・売却にかかる費用、税金などを見積もる |
4 | 不動産業者に売却を依頼 | ・依頼する不動産業者を決定し、 媒介契約(仲介契約)を結ぶ ・売却手続きに必要な書類を用意する |
売却決定後の流れ
ステップ | 項目 | 詳細 |
---|---|---|
1 | 買主と売買契約を締結する | 手付金(不動産売却額の一部)を受領する |
2 | 所有権移転のための準備 | ・必要書類を揃え司法書士に手続きを依頼する ・住宅ローン残債がある場合 ローン完済手続きも行う |
3 | 買主から残代金を受領する | 不動産会社に仲介手数料などの費用を支払う |
4 | 確定申告を行う | 売却した翌年2月16日〜3月15日までに確定申告を行う (コロナ禍で2020年8月現在、締め切り未定) |
家の売却にかかる期間はどのくらい?
売却する家の状態や周辺環境、地域性などにもよりますが、イエトクが独自に行った、不動産売却経験者のアンケートによると、約6割の人が6ヶ月以内に売却を完了しています(仲介契約〜売買契約)。
その一方で、1年以上かかってしまうケースも約1割程度見受けられます。
早期に家が売却できた理由、売却に時間がかかった理由はそれぞれだと思いますが、売り出し価格が相場からかけ離れていないこと、買主がチェックしたがるポイントを的確に押さえているかなどが早期売却のポイントと思われます。
家の売却で損をしないために知っておきたいポイントとその注意点
査定依頼の前に家の相場を調べて、相場感を養っておく
不動産会社に依頼する前に、SUUMOなどの不動産ポータルサイトなどで現在売り出されている近隣物件の価格と条件を調べてみましょう。
駅からの距離や敷地面積、建物の面積・築年数や周辺環境を確認し、相場感をつかんでおきましょう。
そして自分の物件が好条件なのか、それとも課題の多い(すなわち条件の悪い)物件に該当するのかを、おおよそでよいので調べておきます。
後日、不動産会社と打ち合わせするときに、相場感や物件の状況・条件などが把握しやすくなります。
1社ではなく複数社に査定依頼をして比較してみる
これは高く売るために非常に重要なポイントです。
ここで注意してほしいのが、査定額の一番高い会社に依頼するという意味ではないということ。
不動産売買は買主がその金額で納得して購入するか否かですから、不動産会社が提示する査定価格で必ずしも売却ができるわけではありません。
売却依頼をもらいたいがために一般的な相場よりも査定額を高く提示し、さも「自分たちに任せてくれれば高く売れる」というように説明する不動産会社も少なからずいます。
査定額が必ずしも売却金額となるわけではありませんから、結果的に査定額を大幅に下回る額になってしまうこともありえます。
こういったトラブルを防ぐためには、複数社に査定金額を出してもらい、その内容に根拠があるのか?や説明がわかりやすいのか?を判断基準にすべきです。
また、査定については記録が残るように「査定報告書」などの書面でもらうようにしましょう。
その記載が妥当であるか、自分で調べた相場や周辺環境などと照らし合わせて、迅速かつ信頼できる会社かどうかを判断すべきです。
不動産会社の選び方と注意点
具体的にどのように不動産会社を選ぶべきか、ポイントや注意点を紹介していきます。
不動産会社の選び方のポイント
不動産は面積や築年数、そして周辺環境以外にもさまざまな法令が絡むため、しっかりとした専門的調査が必須です。
査定の段階から現時点で考えられる売却の際のリスクを正しく説明してくれたり、必要となる経費を算出してくれたりと、売主に寄り添った説明や提案をしてくれる不動産会社であるかどうかが判断の分かれ目です。
また、レスポンスの悪い不動産会社も避けるべきです。
「担当者となかなか連絡がつかない」「連絡しておいた内容が担当者本人に伝わらない」といった連絡の不備は、信頼関係を損ねますし、重要な書類をやり取りする必要がある業務ですから大問題に発展しかねません。
逆に、何でも即答する不動産会社も控えた方が無難です。
「知識が豊富だから信頼できる」とも捉えることができそうですが、不動産は関連する法令が多く、慣れている不動産会社ほど売主のリスクを小さくするための調査を大事にします。
それらをきちんと調べた上での回答なのか、それとも安易に返事をしているのかを見抜く必要があるのです。
一括査定サイトで比較するときの注意点
前述しましたが、不動産会社を選ぶ際には査定額で比較するのではなく、その根拠が妥当であるのか、また売主や買主にわかりやすく説明しようとしているのかで不動産会社を比較すべきです。
一括査定サイトを利用する場合、初回に入力する情報は複数社共通ですが、その後の連絡のやりとり次第では、特定の会社からの質問に対して売主が回答した内容が、査定額や売り出し条件に影響を与える場合があります。
手間に思うかもしれませんが、どの会社に何を聞かれて、何を伝えたのかを記録しておき、その会社の調査力や提案力が妥当であるかの判断基準にしてみましょう。
家を売るときにかかる諸費用や税金

家を売却するときにかかる費用や税金は以下のとおりです。
売却額そのままが自分のお金になるわけではないので、しっかりと準備しておきましょう。
■家を売却する際にかかる費用・税金
- 仲介手数料
- 売買契約締結時の印紙税
- 住所移転や抵当権抹消に関わる登記費用
- その他、売却のために要した費用(測量やインスペクション、ハウスクリーニングなど)
- 譲渡所得税(取得したときの額などに応じて確定申告が必要)
家を売却するときの注意点
1)住み替え(買い替え)の注意点
住み替えのため家を売却する場合、先に新居に引っ越して、空き家になった家を売り出すほうが、建物を見学しに来る方を受け入れるのにストレスがなくなります。
また片付けやハウスクリーニングが終わっているほうが評価されやすくなり、早期売却につながりやすいといえます。
しかし、先に引っ越すことが困難であることから住みながら売却相手を探すことになるケースも多くあります。
この場合、売却が決定した場合いつまでに退去するのか(もちろん引っ越し先のアテを見つけておくことも大切)、エアコンや照明などを売主で撤去するのか、置いていくのかなどを事前に決めておくことがスムーズな売却につながります。
なお、室内が汚れていたり、散らかっていたりすると購入検討者に忌避されやすいので、こまめに掃除をして印象を良くしておきたいものです。
また、建物の劣化状況を明確に買主に伝えるため、建築士の「インスペクション(建物状況調査)」を実施しておき、補修が必要な箇所は事前に対処しておくというのも不動産売却額を下げないためのポイントです。
もし、補修が必要であっても売主側で対処できない場合は、先にその旨を提示しておくことが早期売却の近道です。
2)相続した家を売る場合
不動産登記の名義変更が実施されているか確認しておきましょう。
特に相続人が複数いるにもかかわらず、被相続人(亡くなった人)の名義のままである場合は、相続人決定の根拠となる「遺産分割協議書」が必要となります。
また、不動産売買に必要な書類(不動産権利書・登記識別情報など)が不足していることも考えられますので、不動産会社および司法書士などとも相談して、早めに書類を用意しておくことをおすすめします。
3)離婚による家の売却の場合
住宅ローンを利用していない、あるいは住宅ローンを完済しているのであれば、通常の売却と同様に扱うことができます。
しかし、住宅ローンが残っていて、かつ売却金額で住宅ローンの残額を返済できそうもない場合は、金融機関の承認が必要な「任意売却」という手段を選択する必要が出てきます。財産分与について明確な方針を立てた上で(弁護士に相談することをおすすめします)、金融機関に相談しておきましょう。
家を売るときのよくある疑問

1)住宅ローンが残っていても大丈夫?
住宅ローンが残っていても、家を売却すること自体は可能です。
事前に住宅ローンを完済しておけるのであればそれが一番望ましく、金融機関の抵当権についても抹消しておくことができるのですが、それが困難な場合は、買主に所有権を移転するときまでに(あるいは当日に)、住宅ローンの完済手続きを取る必要があります。
家の売却額が住宅ローンの残額を上回る、あるいは足りない分は自己資金で支払うことが明確な場合は、事前に金融機関と相談した上で提示された書類に記入しておき、所有権移転手続きに合わせて同時に抵当権を抹消してもらうことで対応が可能です。
これらは家の売却を依頼する不動産会社とも打ち合わせしておきましょう。
家の売却額と自己資金を足しても住宅ローンを完済できそうもないが、家を売却せざるを得ないようなときは、「任意売却」といった手続きを取ることも可能ですので、金融機関と相談してみましょう。
2)家に住みながら売りに出せるのか?
先に述べた「家を売却するときの注意点」でも説明しましたが、住みながらでも家を売りに出すことは可能です。
ただし、見学希望の方の対応が在宅時に限られてくることから、絶好の売却の機会を逃してしまうことも考えられます。
家の売却を依頼する不動産会社と事前に見学の対応ができる日時や曜日をこまめにやりとりして、できる限り室内の見学者を受け入れるようにしたほうが早期に、かつ不動産価格を下げずに売るためのコツです。
もちろん建物や室内をきれいにしておく、破損している箇所は直しておくなどの事前対策は必要になりますので、不動産会社と売却方針についてよく相談しておきましょう。
3)すぐに売りたい場合はどうすればよいのか?
どうしてもすぐに現金にしなければならない場合は「仲介」ではなく、不動産会社による「買取」を相談してみてください。
ただし、「仲介」よりも「買取」の場合の家の売却額は低くなります。
少しでも家の売却までに時間的余裕があるのであれば、「仲介」で相場よりも少し安めに売り出し価格を設定し、「仲介」で一定期間経っても売れない場合に「買取」に切り替えてもらうなどの方針を不動産会社と相談してみましょう。
不動産会社としっかりコミュニケーションを取ることが損しないコツ
ここまで、家の売却のおおまかな流れや注意点をご紹介しました。
家を売却する理由は人それぞれで、売却に向けての手続きや売却戦略は異なります。早期に高く売るのが理想だと思いますが、なかなか難しいのが現実です。
「早く売る」のか、「できるだけ高く売る」のかの優先順位を不動産会社と一緒に立案していくためにも、価値観の合う、そして連携が取れる担当者との出会いが必須です。不動産会社としっかりコミュニケーションを取って、損しない家の売却に取り組みましょう。
監修者
大野 光政(おおの みつまさ)
一級建築士、宅地建物取引士、既存住宅現況検査技術者
大金興業株式会社代表取締役。 建築士事務所、不動産業、建設業などの業務をマルチにこなす一方で、建築や設備に関連する資格を多数所持していることを活かし、2006年から生活情報サイト「All About」の公式ガイドとして建築・リフォームなどの記事を執筆。 一般消費者に建築や不動産に関わる話をわかりやすく親しみやすく伝えることをモットーとしている。 ■Webサイト 大金興業株式会社 https://www.daikin-i.com/