土地売却の査定方法は?査定のポイントや注意点をプロが解説
土地を売却するにあたって、まず何をすればよいのか、売却の相場はいくらに設定するのかなど、わからないことも多いはずです。
おおよその売却金額を知るために、不動産会社の査定を利用は必須ですが、必ずしも査定額が売却額とならないのが現実です。
この記事では、土地の売却で損しないための知識として、基本的な土地売却の手続きの流れと、査定のポイントについてご紹介します。
土地を売却するために事前に何をしておくべきか、よい不動産会社を選ぶためにどういったポイントを押さえておくかを知り、損をしないための売却活動につなげましょう。
この記事の監修・執筆者
大野 光政(おおの みつまさ) 大金興業株式会社 代表取締役
一級建築士、宅地建物取引士、既存住宅現況検査技術者。
建築士事務所、不動産業、建設業などの業務をマルチにこなす一方で、2006年から生活情報サイト「All About」の公式ガイドとして記事を執筆している。

目次
土地の査定はどんな方法で行うの?土地査定の流れ
土地の査定から売却までは、以下のような流れになっています。
土地査定の流れ
- 情報収集
- 公的な情報や物件情報サイトなどで土地の相場を調べる
- 簡易査定
- 不動産会社に土地の概要を伝え、机上で査定してもらう
- 詳細査定
- 不動産会社に現地を訪問してもらい、詳細な査定を依頼する
- 媒介契約
- 納得のいく査定をしてくれた不動産会社に売却を依頼する
- 売却活動
- 売り出し価格を決定し、現地見学や価格の見直しを適宜行う
本格的な販売活動に移る前に、自分でもできることがありますので、上記の流れを意識しながら計画を立てましょう。
自分でも相場を調べることはできる
適切な価格で土地を売却しようと思うなら、事前に自分で土地の相場やおおよその評価を把握しておくことをおすすめします。
初めて依頼する不動産会社に今後の売却仲介を任せるにあたり、担当者が正しく土地を理解してくれているかの判断基準にもなります。
一括査定サイトの利用や、不動産会社に査定を依頼する前に、以下の方法で自分なりに相場を調べておくようにしましょう。
自分で土地の相場を調べる主な方法
・手軽に調べるなら「SUUMO(スーモ)」などの不動産ポータルサイト
SUUMOをはじめとした各種不動産ポータルサイトは、大手不動産会社が運営しているところも多く、全国のさまざまな物件情報が集まっています。
特に売却予定の土地と同じような立地や面積の土地が売り出されている場合には、とても参考になります。
メールアドレスなどの登録をせずに、現在売り出し中の物件を調べられるので、手軽に幅広く情報を探すのであれば、まずはポータルサイトを利用してみるとよいでしょう。
・手間をかけて調べる方法は下記の3通り
所有している土地に課税される固定資産税の算定根拠となる「固定資産税評価額」、相続税を計算する際に用いられる、国税庁の土地評価基準である「路線価」、国土交通省が定める土地の価格基準である「地価公示・都道府県地価調査」を使って土地の相場を計算する方法もあります。
詳しくは、以下の記事を参照してください。
関連記事:土地売却の相場を簡単に調べる方法と失敗しないためのポイント
土地の査定額が決まるポイントは?
土地の場合、家とは異なるポイントが査定額に影響することを理解しておきましょう。
土地の査定額を決める際、不動産会社は以下の6点を調査しています。
- エリアおよび公共交通機関との距離
- 法令上の建築制限
- 道路状況
- 土地面積、形状、高低差
- インフラの整備状況
- 周辺施設、近隣環境など
それぞれについて、詳しく解説していきます。
ポイント1:エリアおよび公共交通機関との距離
その土地がどのエリア(町、地域)にあるかで大きく査定額が変わります。
人気のエリアは、土地を探している人が多くなり、査定額も高くなります。
逆に、公共交通機関の駅から遠い、特定の業種にしか使えない、など制約がある土地は、査定額が低くなります。
また、一般的に駅からの距離は近い方が、1坪あたりの評価額が高くなる傾向にあります。
ただし、駅から徒歩30分以上になるとバスや自家用車でのアクセスが前提となるため、ある一定の距離を超えると、 価格の減少幅は小さくなるようです。
ポイント2:法令上の建築制限
土地には、地域によって建築できる建物用途(お店や病院、マンションなど)や床面積に制約があります。
また建築物の高さにも制限が定められているため、土地の価値が大きく上下する要因となっています。
大通りに面した地域には商業系のビル建物が集まり、その一方で、戸建住宅がある一定の地域に固まって建築されている場合が多いのはこのためです。
都市計画において、第1種低層住居専用地域や、第2種住居地域、商業地域などと地域ごとに区分がされ、立てられる物件の種類も決められています。
原則として建物を建築することができない地域(市街化調整区域)では、土地用途が畑や資材置き場などに限られるため資産価値が低くなります。
さらに、市街化調整区域内の農地(田、畑など)においては他の用途への変更が認められないケースもありますので、売却が困難になるケースもあります。
用途地域は各自治体のホームページに掲載されていることが多いので、「〇〇市 用途地域」というようにネット検索して調べてみるのもよいでしょう。
また、用途地域により、建蔽率(敷地面積に対して建物の建築面積に対する限度)や容積率(敷地面積に対して建物の延床面積に対する限度)が定められており、これらは非常に重要な資産価値決定条件となっています。
ポイント3:道路状況
その敷地に接している道路である「前面道路」は不動産価値を決定する大きな要素の一つです。
見た目が道路状でも、行政が認めた道路であり、かつ、前面道路とその土地の接する長さ(接道長さ)が2m以上なければ建築が許可されません。
さらに前面道路の幅員(道路の幅)が4m未満の場合、新たに建物を建築しようとするときには、敷地の一部を前面道路と一体となって使用できるようにする措置「セットバック」が求められます
セットバックは、建築する建物の大きさに影響を与える部分となります。
また、前面道路の接続方向によっても査定額は上下します。
南側に接道している場合は陽当たりが良いため査定上の評価が高くなり、北側接道の場合は査定額が低くなる傾向にあります。
2つ以上の道路に接している土地(角地など)では開放感があり、日照や通風に優れていると判断され、査定額が高くなるというケースもあります。
ポイント4:土地面積、形状、高低差
上記ポイントの1〜3を踏まえ、その土地に建築できる建物の用途や大きさに適した面積であれば評価が高くなります。
逆に、面積が大きくても、前面道路と接している部分が狭い土地や、敷地内に高低差があったり、斜面(法面)などがあったりすると、実使用面積が小さくなったり、対策工事が必要になったりするため評価が低くなります。
特に、敷地内あるいは隣地との間に高低差があって、擁壁(崖などの崩壊を防ぐためにコンクリートや石で作られた壁)などが設置されている場合には注意が必要です。
その擁壁が適切な建築手続きによって築造されたものであるか、破損箇所がないかによっても大きく評価が変わりますので、きちんと事前に調査をしておきましょう。
ポイント5:インフラの整備状況
上下水道や都市ガス管が整備されているかが査定額に影響します。
前面道路には上下水道管が通っていたとしても、敷地内に管を引き込んでいない場合は、やや評価が下がる傾向にあります。
ポイント6:周辺施設、近隣環境など
ここまでのポイントはいずれも敷地内に建物を建てる際のコストに直結する部分であるのに対し、その土地を利用する人にとっての居住性に影響する部分として周辺施設や近隣環境が挙げられます。
例えば、墓地や騒音・悪臭の発生する施設が近い場合、査定額が下がる傾向にあります。
他にも、小学校や病院、警察署など、一見すると良質な住宅地を形成する要素とも考えられる施設でも、運動会の周辺混雑やチャイムの音、パトカーや救急車のサイレンを不快に思う人もいるため、査定価格に影響することがあります。
土地の査定依頼は「無料不動産一括査定サイト」がおすすめ

近隣の物件について相場を調べることはできても、初めて土地を売却する人が、前述のような査定ポイント全てをチェックすることは困難です。
そこで、無料で利用できる不動産一括査定サイトの利用を検討してみましょう。
土地の所在地や面積、おおよその情報を入れるだけで、早ければ当日、遅くとも数日中には概算の査定金額が複数の不動産会社から送られてきます。
また、実際に土地を見て、様々な調査の上で具体的な査定を依頼することができます。(こちらは査定金額が提示されるまで数日から1週間程度かかることもあります)
そして、複数の会社の査定資料を見比べることができるため、自分の土地の特徴をしっかりと分析することができます。
査定依頼をしたからと言って、必ずしも売却しなくてはいけないわけではないので、一度依頼してみてはいかがでしょうか?
土地査定を依頼する前に準備しておくこと
土地の査定を依頼する前に、以下の2点は明確にしておきましょう。
- 土地の境界を確認しておく
- 所有権を確認して自分だけで手続きを進められるか確認しておく
後に近隣との境界線や名義などでトラブルを起こさないためにも、確認は必須です。
(1)土地の境界を確認しておく
査定を依頼する前に、土地の境界を確認しておきましょう。
通常は、敷地の境界点となるところにコンクリートや金属製の境界杭やプレートが入っているはずです。
また、境界の位置を明示した測量図が残っている場合は、査定の時までに用意しておきましょう。
古くから土地を所有している場合、測量図が古くて不正確であったり、測量が実施されていないこともあり、境界杭すら見つからないこともあります。
査定の際はその旨を不動産会社に伝え、今後の売却に向けて測量費用の見積書を提示してもらいましょう。
(2)所有権を確認して自分だけで手続きを進められるか確認しておく
相続した土地や古くから所有している土地の場合、所有者の名義が変更されていないこともあります。
夫婦や親子など、複数名で土地を取得していた場合、所有者全員の意思が揃っていないと売却時に思わぬトラブルになることも考えられます。
査定依頼する時までに、その土地を管轄する法務局で「登記事項証明書」を取得し、所有者の名義を確認しておくようにしましょう。
過去に実施された測量図が法務局に登記されている場合は写しを発行してもらうことができるので、合わせて問い合わせてみることをおすすめします。
土地の査定で注意すべき2つのこと
以下は、土地を査定してもらう際に、注意しておきたいことをまとめました。
査定価格の見方や、売却依頼をする不動産会社の選び方は、売却の戦略を立てるのに重要なポイントとなるので、念頭に置いておきましょう。
(1)査定価格は売却価格ではない
一括査定や、実際に現地調査をしてもらい提示された査定金額がそのまま売却額になる訳ではありません。
査定した不動産会社からの「この土地はこれくらいの金額で売買される可能性が高いです」という調査資料に過ぎず、査定価格>売却価格となるケースも多いのです。
実際には査定金額や物件データなどの資料に基づき、売り出し価格を設定し、1社あるいは複数社の不動産会社に販売活動を行ってもらい、買い手がつかなければ価格を下げる必要が出てきます。
土地のローンが残っている場合は、売却までに一括返済する必要があるため、査定金額を元に返済計画を立ててしまうと非常に危険です。
自己資金も踏まえ、査定金額をある程度割り込んだ額での売却になった場合も想定して、売却戦略を立てるようにしましょう。
(2)1社のみでなく複数社へ査定依頼して比較する
悪意のある不動産会社だと、査定金額を高く説明しておき、「うちの会社に任せてくれれば高く売れる」と思い込ませ、契約を取ろうとします。
しかし、実際は査定価格で提示した金額だと売れないので、あとから条件や家の状態を理由に値下げを要求されたり、仲介を断ろうとするとそれまでにかかった費用を請求される、という事もあります。
そのためにも、複数の会社から査定金額を提示してもらい、根拠や判断基準の説明をしっかり聞いた上で、会社選びをするようにしましょう。
では、最初から信頼のできる良い不動産会社を見分けるには、どうすればよいのでしょうか?
信頼できる不動産会社の選び方
不動産会社に査定してもらう時には、査定金額の根拠となった説明資料を提示してもらい、必ず説明を聞くようにしましょう。
その地域にある土地の価格帯(坪単価)が金額のベースとなり、その土地に影響する建築関連法令や近隣状況や様々な条件を考慮して査定額が増減します。
また、近隣の売買事例なども参考資料として提示されますので、それらの売買条件なども説明してもらうことで、不動産会社の担当者が近隣の土地を正しく理解しているか見抜けるはずです。
売却を依頼する不動産会社の担当者には、今後、売却完了まで、土地売買の手続きをサポートをしてもらう必要があります。
売主の気持ちに寄り添い、わかりやすく説明してくれるような担当者を選ぶようにしましょう。
土地の査定に関するよくある質問
土地の査定でよくある質問をまとめました。
(1)土地の査定に費用はかかるの?
不動産売却のための査定は、無料となっている会社がほとんどです。
不動産会社が土地を売り出すために必要な情報収集として実施するものであり、営業活動の一環として行っているものだからです。
特に、無料不動産一括査定サイトなどであれば、安心して気軽に査定をしてもらうことができます。
ただし、相続税の計算や遺産分割協議などで必要な証明書用に不動産を査定してもらう場合は、不動産鑑定士(国家資格)による公的な査定となり、有償の対応が必要です。
(2)相続した土地の場合はどうすればいいの?
相続した土地の場合は、まず名義変更が適切に行われているか法務局の登記事項証明書でチェックしましょう。
もし名義変更がなされていない場合は、亡くなられた方(被相続人)の法定相続人との間で「遺産分割協議書」を作成し、法務局に必要書類を添えて名義変更を行います。
ご自身で作成することが不安な場合は、司法書士に依頼すると良いでしょう。
また、権利書もしくは登記識別情報が手元にあるかどうかも確認しておきましょう。
見つからない場合は、不動産会社に売却仲介を依頼するときにでもその旨を説明しておき、必要な手続きと費用についてアドバイスしてもらうようにしましょう。
(3)田舎の土地でも売れるの?
田舎の土地でも、買い手がたくさん現れる訳ではありませんが、売れる可能性はあります。
法令上の規制で建物が建築の可否や、上下水道整備の有無などで査定金額は大きく変動しますが、その田舎のロケーションを生かした土地利用を検討している人は少なからずいます。
特に最近では、太陽光発電やキャンプ場用地、別荘用地として田舎の土地を求めているケースも見受けられます。
使用しない土地を持ち続けていても、固定資産税や草刈りなどの維持管理費用が発生します。
売却を検討しているなら、短期間で売れるということではありませんが、まずは無料査定を利用して、どのような売り出し方法が望ましいのかなど、不動産会社に相談してみるとよいでしょう。
(4)土地の売り時ってあるの?
バブル時のような景気動向であれば土地を売るタイミングというのは非常に難しいと思いますが、現在の状況であれば「売ろうと思った時が売り時」と考えてよいでしょう。
これからの日本は人口が減少し、特に労働者人口が減っていきます。
空き家も増えている状況で、極端な経済事情や政策変更がない限り、土地の値段が高騰していくことは考えにくいです。
なお、例外的な話として土地の価格が上がる可能性があるとすれば、すぐ近くに利便性の高い施設(公共施設や大型店舗など)ができる、道路が拡張されるなどで、周辺環境が変わるような場合です。
ただし、ガセネタや噂に振り回されないように情報収集しておき、査定をしてもらった不動産会社に直近の動向などを質問しながら、検討するようにしましょう。
まとめ
今回は土地を売るための流れと査定のポイントをご紹介しました。
土地の売却は、売主の意向はもちろん、買主がどんなことをその土地に求めているのか知ることも大切です。
不動産会社を探すときには、査定金額だけで判断せず、売主が直面する煩雑な手続きをサポートしてくれて、買主のニーズを踏まえた販売提案ができる担当者を見つけるようにしましょう。
監修者
大野 光政(おおの みつまさ)
一級建築士、宅地建物取引士、既存住宅現況検査技術者
大金興業株式会社代表取締役。 建築士事務所、不動産業、建設業などの業務をマルチにこなす一方で、建築や設備に関連する資格を多数所持していることを活かし、2006年から生活情報サイト「All About」の公式ガイドとして建築・リフォームなどの記事を執筆。 一般消費者に建築や不動産に関わる話をわかりやすく親しみやすく伝えることをモットーとしている。 ■Webサイト 大金興業株式会社 https://www.daikin-i.com/