マンション売却で失敗したくない!流れや費用の注意点をプロから伝授
住み替え、財産分与、さまざまな理由でマンションを売却する場合、どんな流れで進めたらよいでしょうか?
マンションの売却で損しないために知っておきたい、マンション売却の流れ、事前準備、失敗しない不動産仲介会社の選び方を紹介します。
目次
マンション売却の流れ
マンション売却は、おおまかに7つのステップで進みます。
マンション売却の流れ
- 相場を調べる
-所有している不動産の販売価格の相場を調べる - 仲介する不動産会社を選ぶ
-自分の希望や条件に合った不動産会社を見つける - 媒介契約を結ぶ
-売買の仲介を依頼するための媒介契約を締結する - 販売活動を開始する
-不動産会社に物件情報を公開してもらい、買い手をつのる - 購入希望者と細かい条件交渉
-購入希望者が現れたら、金額などの条件交渉を行う - 売買契約を結ぶ
-価格や条件の折り合いがついたら、売買契約を結ぶ - 不動産を引き渡す
-売買契約で定めた期日までに契約金額を受け取り、物件を引き渡す
売却前に必要な事前準備
マンション売却の大まかな流れをご説明しましたが、不動産の査定をしたり、不動産会社に問合せをする前にしておくべき事前準備があります。
以下のような事前準備ができていると、不動産仲介会社とのやり取りがスムーズです。
- 自身だけで売れる物件か調べる(共有名義でないか)
- 売却したい期日、売却したい金額を決める
自身だけで売れる物件か調べる(共有名義でないか)
売却を考えているマンションが、自分の意志だけで売れる物件かを確認しましょう。
もし、共有名義の場合は、売却には共有名義者の同意が必要になるため、自分一人で売却の話が進められません。
売却したい期日、売却したい金額を決める
マンションを売却したい目的や、売却を完了させたい期日を明確にしておくと、不動産仲介会社に依頼したときに、スムーズに動いてもらいやすいです。
たとえば、以下のグラフを見ていただくと、マンション売却にかかった期間は、3ヶ月以内が約30%で、約80%は半年以内に売却していることがわかります。

「多少金額が安くてもいいから早く売却したい」場合と、「売却は急がないので高く売却することを優先する」場合では、不動産仲介会社の営業活動にも違いが出てきます。
売却したい期日や売却金額が決まったら、不動産売却の最初のステップである、マンションの販売価格の相場を調べてみましょう。
販売価格の相場を知るためには、「SUUMO売却査定」などの不動産の一括査定サイトで査定を申し込むのがおすすめです。
査定を依頼する場合の注意点は、次の章でお伝えします。
マンション価格の査定をするときの注意点
不動産の一括査定サイトで、査定を依頼する際の注意点は以下2点です。
- 査定額には格差がある
- 査定金額=売却金額ではないので要注意が必要
査定額には格差がある
SUUMOなどの不動産一括査定サイトで、数社の不動産会社に査定を依頼すると、査定額の格差がでることもあります。
査定は、不動産会社が独自のデータベースやノウハウを基に算出しているので、金額に差がでること自体は自然なことです。
しかし、他社と比較して高すぎる査定額を提示してくる不動産会社には注意が必要です。
契約を結ぶことだけを目的に、実際には売却が難しいような高い査定額を提示している可能性があるからです。
査定金額=売却金額ではないので要注意が必要
査定金額は、あくまでも目安の金額で、売却金額ではありません。
もし、査定金額が一番高い不動産会社と契約したとしても、物件を公開して営業活動をした結果、高すぎて売れない場合は販売価格を下げて売却することになります。
そのため、査定金額はあくまで目安として捉え、売却金額だと考えて資金計画をたてないように注意しましょう。
また、相場観をつかむ方法として、SUUMOなどの不動産ポータルサイトなどで、保有物件に近い物件の販売価格をチェックするのもおすすめです。
不動産仲介会社を選ぶ際の注意点
マンションの販売価格の相場を確認できたら、売買を仲介してくれる不動産会社を選びましょう。
実際に、マンションを売却した人に「何社の不動産会社に依頼をしたか?」を聞いてみたところ、約33%の方は1社のみ、約半数の方が2社以内でした。
つまり、不動産会社を比較検討していない方が多い結果といえるでしょう。

社数が多ければいいと一概には言えないですが、マンションを売却する上では自分と相性のいい担当者を選ぶことは非常に重要なので、慎重に比較検討することをおすすめします。
不動産仲介会社を選ぶ際は、以下のポイントに注意しましょう。
- 担当者で選ぶ
- 不動産仲介の契約は3種類ある
担当者で選ぶ
「依頼する不動産会社は大手がいい?地元密着の中小企業がいい?」と悩む人は多いですが、一番重視するべきは担当者との相性です。
マンションを売却するためには、数カ月から長いと1年以上担当者と付き合うことになります。
その間、不動産会社の担当者とはずっと連絡を取り合うので、誠実か、自分が安心して付き合えそうかという視点で、担当者を選びましょう。
契約には3種類ある
不動産会社を選んだら、売買の仲介を依頼するための媒介契約の締結を行います。
媒介契約とは、不動産の売り手と買い手を仲介する不動産会社と、依頼主が結ぶ契約のこと。
媒介契約には、以下のような3つの種類があります。
それぞれ契約条件に違いがあるため、あなたの条件に合うものを選択してください。
一般媒介契約
一般媒介契約とは、複数の不動産会社に取引の仲介を依頼できる契約形態です。
自分で人脈をたどるなどして、買い手を見つけることも可能です。
ただし、「不動産流通標準情報システム(レインズ)」という不動産業者のみが登録・利用できる不動産ネットワークへの掲載義務がなかったり、不動産会社によっては広告費をかけなかったりするなど、熱心に営業をしてもらえない可能性があります。
専任媒介契約
専任媒介契約とは、1社の不動産会社にのみ仲介業務を依頼する契約です。
ほかの不動産会社と契約できませんが、売主自身が買い手を見つけることも可能です。
自分で買い手を見つけた場合は、不動産会社に仲介費用を支払う必要はありませんが、それまでに発生した営業経費を不動産会社から請求される可能性があります。
専属専任媒介契約
専属専任媒介契約とは、仲介を1社の不動産会社に限定して依頼する契約です。
ほかの不動産会社と契約できないため、依頼された不動産会社は積極的な営業活動をすることが求められます。
また、自分で買い手を見つけた場合は、契約した不動産会社を通して仲介手数料を支払う必要があります。
売却時の必要書類
売却時に必ず必要な書類は以下の9個です。
- 登記事項証明書
- 住宅ローン残高証明書もしくはローン返済予定表
- 土地・建物の登記済証(権利証)もしくは登記識別情報
- 印鑑証明書
- 本人確認書類
- 固定資産税納税通知書
- 固定資産評価証明書
- 建築当時の建築確認済証・図面、検査済証
- 管理規約・使用細則(マンションの場合)
これらの書類以外にも、「あったほうが良い書類」「場合によっては必要な書類」などが必要な場合もあります。
必要書類についての詳細は「専門家監修|不動産売却の必要書類をフェーズ毎に解説!チェックリスト付き」の記事でご紹介しているので、是非参考にしてみてください。
売却にかかる費用
不動産売却では、以下のような手数料がかかります。
- 仲介手数料
- 印紙代
- 登記費用
それぞれ、どういった費用でどのくらいの金額なのかを説明します。
1) 仲介手数料
仲介手数料とは、マンションを売却できたときに不動産仲介会社に支払う手数料のことです。
支払うタイミングは、売買契約が成立したとき、物件の引き渡しのときで、半額ずつ支払うのが一般的です。
仲介手数料の上限は、宅地建物取引業法で以下のように定められています。
売買価格が200万円以下の場合は、取引金額の5%以内
売買価格が200万円超~400万円以下の場合は、取引金額の4%以内
売買価格が400万円超の場合は、取引金額の3%以内
上記はあくまで上限なので、それより低い金額で設定されることもあります。
不動産会社によって違うので確認してみましょう。
2) 印紙代
印紙は1万円以上の契約をする際に必要で、契約書などに添付します。
この印紙代を購入することで、印紙税を納付したとみなされます。
印紙代は、以下のように契約金額で異なります。
記載金額 | 不動産売買契約書 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
1万円~10万円以下 | 200円 |
~50万円以下 | 200円 |
~100万円以下 | 500円 |
~500万円以下 | 1,000円 |
~1,000万円以下 | 5,000円 |
~5,000万円以下 | 10,000円 |
~1億円以下 | 30,000円 |
~5億円以下 | 60,000円 |
3) 登記費用
不動産を売るときには、抵当権抹消のための登記費用がかかります。
抵当権とは、銀行が住宅ローンの契約を結ぶ際に、家を担保にとれる権利のこと。
不動産を売却する売り手は、買い主から代金を受け取って住宅ローンを完済することで、抵当権を抹消できます。
この抵当権の抹消をする際は、司法書士に依頼する必要があり、以下の費用がかかります。
費用
- 司法書士への依頼費用
おおむね5,000円~1万5,000円 - 抵当権抹消の登録免許税
不動産の個数あたり1,000円
また、登記上の住所と所有者の現住所が違う場合、登記上の所有者の氏名が現在の氏名と相違している場合は、住所変更登記や氏名変更登記を行います。
こちらも抵当権抹消の登記費用と同様に、以下の費用が発生します。
費用
- 司法書士への依頼費用
おおむね5,000円~1万5,000円 - 抵当権抹消の登録免許税
不動産の個数あたり1,000円
マンション売却でかかる税金
マンションを売却すると、税金が発生します。
申告し忘れがないように、以下3つのポイントを確認しておきましょう。
- マンション売却にかかる税金について
- 利益が出たら、確定申告が必要
- 受けられる特例について
マンション売却にかかる税金について
マンションを売却した結果、利益が出た際にかかる税金は以下の3種類です。
- 譲渡所得税
マンションが購入時より高い価格で売却できた場合は、確定申告で所得税を納付する義務があります。
税率はマンションの所有期間によって異なり、長期保有(5年以上)の場合は15%、短期保有(5年未満)の場合は30%です。 - 住民税
マンションの売却益が出た場合、住民税を納付する義務があります。
税率は所有期間により違い、長期所有で9%、短期所有で5%です。 - 復興特別税
復興特別税とは、東日本大震災の復興財源となる税金です。
所得税の金額に対して、税率2.1%がかかります。
利益が出たら、確定申告が必要
マンションを売却して利益が出た場合は、必ず確定申告をしてください。
先ほどお話しした通り、売却益が出た場合は譲渡所得税を支払う必要があるからです。
確定申告の期日は、不動産を売却した年の翌年2月16日から3月15日です。
受けられる特例について
マイホームを売却した場合は、所有期間の長さを問わず、「3,000万の特別控除」が受けられます。
特別控除を受けると、売却益に対して3,000万円までは課税されません。
たとえば、売却益が1,000万円出た場合、1,000万円ー3,000万円=ー2,000万円となるため、譲渡所得税は発生しません。
マンション売却経験者の失敗談
最後に、マンション売却に失敗したと感じている方の声をいくつか紹介します。
マンションの売却に失敗しないために、参考にしてみてください。
40代 男性
失敗したのは売却時期です。2013年6月中旬に茨城県日立市にあるマンションを親の相続で譲り受けました。住まいが東京なのでマンションの使い道がなく管理もできないと判断し売却を決意。
売却時に利用した不動産会社は親がマンションを購入した時と同じ不動産会社でしたが、4,800万円で購入したマンションは900万円という売値になってしまいました。
私は「なぜ?いくら田舎でも4000万円の値も落ちるものなの?」と不動産会社に訪ねました。すると不動産会社は「2011年3月の東日本大震災の影響でマンション周辺の土地価格が下がってしまったんです」と説明してくれました。
もったいないとは思いつつ、管理も無理だし誰も住まなければ部屋はダメになるしと、泣く泣くその価格で売却。失敗したなと思っています。
マンションを売却する際には必ず数件の不動産会社の見積りを出してもらったほうがよいと思います。なるべく高値で売るべきですから。
(売却金額900万円/茨城県日立市・46歳男性)
30代 男性
新築の駅近物件を35年ローン、3,770万円で購入しましたが、親の都合で実家に住むことになり貸しに出しました。家賃が入ってきていればローンの返済も問題なかったのですが、空家になるとローンと管理費の支出がきつくなり最終的に手放すことに。
売却をしようとした頃、道路の反対側に新築で低価格のマンションの分譲が始まったことで、中古相場が急激に下がり売却価格も下がってしまいました。今思えば、ローンの借り換えなどをして資産として保有しておくべきだったと後悔しています。
不動産の価値は長期的にみれば変動は少ないので、一時的な状況の変化で売却を判断するのはやめたほうがいいです。
仕事や家庭の事情で不動産の売却を考える場合、マンションを保有し続けるメリットとデメリットを、長期的にとらえる必要があると思います。
(売却金額1,980万円/千葉県千葉市・38歳男性)
マンション売却の失敗談については、下記の記事でも解説しています。参考にしてください。
監修者
野宮 清貴(のみや きよたか)
宅地建物取引士
2013年青山学院大学経済学部卒業。 大手不動産会社にて土地の有効活用、税務コンサル、売買仲介などの提案営業を5年経験後、現在はマンションデベロッパーにて用地仕入れ、売買仲介を行っている。
30代 男性
入居後2年で転勤することになり、賃貸に出すか売却するかで迷ったあげく、「今ならかなり高く売れる」というアドバイスを受け、見積もってもらった。
購入時より1,000万円程度値上がりしていることもあって売却。しかし、その後もどんどん値上がりしているのでもう少し待てばよかったと考えました。
せっかく売却するのであれば、高く売却した方がいいと思います。私の場合、複数の不動産会社で見積もりをとらず、購入した不動産会社の系列店にそのままお願いしてしまいました。不動産会社を比較検討すればよかったです。
(売却金額4,980万円/東京都港区・35歳男性)