不動産売却の税金

2020-12-15

不動産売却の税金について税理士が解説!損しないためのポイントとは?

不動産売却でかかる税金には「注意が必要」といえます。

なぜなら、不動産を売却して利益が出た場合や損失が出た場合、不動産の所有期間などによってかかる税金や税率、使える特例などが異なるからです。

しかも、これを知らずに売却したことで、損をする場合もありえます。

ここでは、どのような場合にどんな税金がかかるのかをわかりやすく説明します。最後のケーススタディまでしっかり読んでくださいね。

目次

    不動産売却でかかる税金の一覧

    不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合は、「譲渡所得税」や「住民税」、「復興特別所得税」がかかります。

    また、利益の有無に関わらず、「印紙税」と「登録免許税」がかかることがあります。

    不動産の売却でかかる税金の一覧
    名称 内容
    譲渡所得税 不動産を売却し、譲渡所得(利益)が出た場合にかかる所得税
    住民税 不動産を売却し、譲渡所得(利益)が出た場合にかかる住民税
    復興特別所得税 東日本大震災の復興財源確保のための税金。所得税額に2.1%が上乗せされる。2037年までの特別措置
    印紙税 売買契約書を作成した場合に課される国税。記載された金額に応じた収入印紙を貼付する。
    登録免許税 登記内容を変更する際、国に払う税金。抵当権が設定されている場合、抵当権抹消の登記費用が必要

    印紙税」とは、印紙税法という法律で定められた課税文書にかかる税金で、文書にかかれた内容と金額に応じた収入印紙を貼付することで納税します。不動産売却の場合には、売買契約書に貼付します。

    登録免許税」は、その不動産が誰のものかを示す「登記」する場合にかかる税金です。

    住宅ローンなどを利用して不動産を購入した場合、金融機関による抵当権が設定されます。不動産を売却する際には、何の権利も設定されていない状態の不動産を買い主に引き渡す義務があります。

    そのため、売主の負担と責任で抵当権抹消登記を行います。

    また、登記簿上の所有者の住所と現在の所有者の住所が異なる場合には住所変更登記、登記簿上の所有者の氏名と現在の所有者の氏名が異なる場合には氏名変更登記が必要です。これも売主の負担で行います。

    「譲渡所得税」や「住民税」、「復興特別所得税」については、次の「利益が出たらかかる税金一覧」で詳しく説明します。

    売却で利益が出たらかかる税金一覧

    不動産を売却して発生した利益のことを「譲渡所得」といいます。

    この譲渡所得に対し、「譲渡所得税」がかかります。

    譲渡所得にかかる税金をひとまとめにして「譲渡所得税」ということもあります。実際は所得税、住民税、復興特別所得税の合計です。

    譲渡所得にかかる税金は、給与所得や事業所得などとは切り離して計算し、税金を支払います。

    給与所得等と切り離して計算することから、この課税方法を「分離課税」といいます。

    「税金関係は、会社の年末調整で、給料から天引きされている」という場合でも、不動産の売却で利益が出たら確定申告をする必要があります。

    (1)譲渡所得税とは

    所得税とは、個人の所得に対してかかる税金です。

    不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合には、譲渡所得に対して所得税(譲渡所得税)が課税されます。

    (2)住民税とは

    住民税は、都道府県や市区町村が行う行政サービスを維持するために必要な費用を分担するために支払う税金です。

    不動産を売却して譲渡所得を得た場合も住民税が課税されます。

    不動産を売却して確定申告し、住民税を支払う必要がある場合は、5月~6月頃に納付通知書が送られてくるので、決められた期日までに支払いましょう。

    (3)復興特別所得税とは

    復興特別所得税は、2011年に発生した東日本大震災の復興のために必要な財源を確保することを目的とした税金です。

    2013年1月1日から2037年12月31日まで、基準所得税額の2.1%分の金額が課税されます。

    売却で利益がでたらかかる税金の計算方法

    不動産の売却を考える際は、予め「利益が出たらどのくらいの税金がかかるのか」を知っておきたいもの。

    ここでは、それを知るための方法を解説します。

    かかる税金を計算するには、売却でどのくらいの利益が出るか「譲渡所得」を計算し、「譲渡所得」に「税率」をかけます。

    順番に、計算方法を見ていきましょう。

    1. 利益を知るために譲渡所得を計算する
    2. 税率をかける

    (1)利益を知るために譲渡所得を計算する

    不動産を売却して得た利益(譲渡所得)を求める計算式は、以下の通りです。

    譲渡所得 = ※1 譲渡価格 -(※2 取得費 + ※3 譲渡費用)-※4 特別控除

    ※1~4は、以下の通りです。

    • 譲渡価格…不動産の売却価格+固定資産税等精算金
    • 取得費…不動産を購入した時の金額
    • 譲渡費用…不動産の売却にかかった費用、仲介手数料など
    • 特別控除…マイホームの売却に対する特別控除など

    譲渡価格とは

    不動産を売却した際に買主から受ける金額

    売買契約書に記載されている売買金額の他、よく出るのは「固定資産税等精算金」で、譲渡価格はこの「固定資産税等精算金」を加えた金額になります。

    固定資産税等精算金とは

    不動産の引き渡し日から、その年の12月31日までの固定資産税相当額を精算するもの

    固定資産税の納税義務者は、1月1日時点の所有者です。不動産を買主に引き渡した後でも、その年の1月1日の所有していた売主に納税義務があります。

    そこで、引き渡し日以降の固定資産税相当額を買主から受け取り精算するのが、固定資産税等精算金で譲渡所得の計算では譲渡価格に含めます。

    引き渡し日から12月31日までの固定資産税の納税義務者はあくまで売主です。買主に負担してもらうには、話し合いで承諾を得ることが必要です。

    実際に固定資産税の精算を行わないケースもありますが、事例としては少ないと思われます。

    では、取得費、譲渡費用、特別控除の内容と求め方を押さえておきましょう。

    取得費の説明、内容、求め方

    取得費とは、不動産の購入時にかかった金額です。

    以下の費用が該当します。

    取得費に含まれる費用

    • 土地や建物の購入代金や建物の建築代金
    • 土地の測量費や整地費、整備費
    • 仲介手数料
    • 購入時にかかった税金(登録免許税、不動産取得税、印紙税など。ただし、事業所得等の必要経費とされたものは除く。)など

    参考:No.3252 取得費となるもの(国税庁)

    なお、建物は使用や年月の経過によって価値が減少するため、取得費から価値の減少分に相当する減価償却費相当額を差し引いた金額とすることになっています。

    減価償却費は、建物の用途や構造ごとに決められている法定耐用年数に応じた償却率をもとに計算されます。

    詳細は国税庁のWebサイトにある確定申告書作成コーナー「よくある質問」でご確認ください。

    参考:確定申告書等作成コーナー よくある質問

    土地や建物を買ったときの金額は、売買契約書を見ればわかるでしょう。

    先祖伝来の土地建物や親から譲り受けたなどの理由で取得費がわからない場合には、売った金額の5%相当額を取得費とすることができます。

    またマンションや建て売りの一戸建てなど土地と建物をセットで購入した場合には、建物部分の取得費がわからないこともあるかもしれません。

    その場合には、契約書に記載されている消費税額から建物の価格を計算したり、標準的な建築価格から建物の価格を算定したりして土地と建物を区分することなども可能です。

    標準的な建築価格から計算する方法については、国税庁のWebサイトを確認してください。

    参考:建物の標準的な建築価額による建物の取得価額の計算表

    取得費は、残っている資料から購入時の価格を推定する方法も認められる場合があります。

    取得費が不明な場合は、税理士など専門家に相談するのが得策です。

    譲渡費用の説明、内容、求め方

    譲渡費用は、不動産を売却するために直接かかった費用です。

    不動産を売却するために支払った仲介手数料や、契約書に貼付した印紙税などが該当します。契約書に売買の条件として記載されている場合には、土地の測量代や清掃費用なども含めることができます。

    修繕費や固定資産税は譲渡費用にならない

    修繕費や固定資産税など、不動産の維持にかかった費用は譲渡費用になりません。

    「抵当権抹消登記にかかる司法書士報酬(依頼代金)は譲渡費用になりますか?」という質問をよく受けますが、この費用は譲渡費用には含まれません。

    特別控除の説明とその種類

    前述のとおり、不動産を売却して利益が出た場合には、譲渡所得に対して税金を支払う必要があります。

    しかし、一定の条件を満たす場合には特別控除や特例を受けることが可能です。

    代表的なものとして「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」や「特定居住用財産の買換え等の特例」があります。

    それぞれの内容と要件を見ていきましょう。

    居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除とその要件

    一般的に「居住用財産の3,000万円控除」といわれているものです。

    マイホームを売却した場合、所有期間に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例です。

    仮に、マイホームを売却して1000万円の譲渡所得が発生したとすると、この特例を適用することで[1000万円-3000万円=-2000万円(マイナスはゼロとみなす)]となるため、譲渡所得税がかからないことになります。

    この特例の適用を受けるには、下記のような要件を満たす必要があります。

    居住用財産の3000万円特別控除の要件

    • 自分が住んでいる家屋を譲渡するか、家屋とともにその敷地、借地権を譲渡すること。以前に住んでいた家屋や敷地などの場合には、住まなくなった日から3年目の12月31日までに譲渡すること(※)
    • 売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと
    • 前年、前々年にこの特例の適用を受けていないこと
    • 譲渡の前年、前々年に居住用財産の買換えや居住用財産の交換の特例、居住用財産の譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと

    住まなくなった家屋や家屋を取り壊した場合には、(Ⅰ)家屋を取り壊した日から1年以内に譲渡契約を締結し、かつ、住まなくなった日から3年目の12月31日までに譲渡すること、(Ⅱ)家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと、を満たす必要がある。

    「居住用財産の3,000万円特別控除」に似た特別控除として、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」があり、この特別控除も譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができます。

    この特別控除は、相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋の敷地などを、2016年4月1日~2023年12月31日までの間に売却し一定の要件を満たしている場合に適用を受けることができます。

    なお、「空き家」とは、下記の要件を満たすものが該当します。

    「空き家」の要件

    • 1981年5月31日以前に建築されたものであること
    • 区分所有登記がされている建物でないこと
    • 相続開始直前に被相続人以外に居住していた者がいない
    • 家屋を譲渡する場合、譲渡時においてその家屋が地震に対する安全性にかかる規定等に適合している(耐震リフォームしている)こと

    空き家の3000万円特別控除」の適用を受けるための要件として主なものは、下記のようなものがあります。

    • 相続開始の日から3年を経過する日の12月31日までに売却すること
    • 売却代金が1億円以下であること
    • 住宅を取り壊さずに売却する場合には、住宅や敷地を相続してから売却するまで事業用として使用したり、人に貸したりしていないこと
    • 住宅を取り壊してから売却する場合には、住宅を相続してから取り壊すまで事業用として使用したり、人に貸したりしていないこと
    • 敷地を相続してから売却するまで事業用として使用したり、人に貸したりしていないこと。取り壊してから売却するまで建物などを建てていないこと
    • 売却する家屋や敷地について、相続財産を売却したときの取得費加算の特例の適用を受けないこと
    • 親子や夫婦など特別の関係がある人に売却したものでないこと

    詳細については、国税庁のWebサイトで確認してください。

    参考:被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

    特定の居住用財産の買換えの特例とその要件(買い替え特例)

    特定の居住用財産(マイホーム)を2021年12月31日までに売って、かわりのマイホームに買い換えた場合には、一定の要件を満たすと譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができます。

    この特例の適用を受けるには、下記の要件などを満たす必要があります。

    特定居住用財産の買換え特例の主な要件
    売却する
    不動産
    売却した人の居住期間が10年以上で、かつ、売却した年の1月1日において売却した家屋やその敷地の所有期間が共に10年を超えるものであること
    以前に居住していた家屋や敷地等の場合には、居住しなくなった日から3年目の年の12月31日までに売却すること
    売却代金が1億円以下であること
    買い換える
    不動産
    建物の床面積が50平方メートル以上のものであり、買い換える土地の面積が500平方メートル以下で国内にあるもの
    耐火建築物の中古住宅である場合には、取得の日以前25年以内に建築されたものであること、または一定の耐震基準を満たすものであること
    マイホームを売却した年の前年から翌年までの3年の間にマイホームを買い換えること、また、買い換えたマイホームに、①売却した年かその前年に取得したときは、売却した年の翌年12月31日まで、②売却した年の翌年に取得したときは、取得した年の翌年12月31日までに居住すること
    その他の
    要件
    売手と買手の関係が親子や夫婦など特別の関係がある人でないこと

    詳細については、国税庁のWebサイトを確認してください。

    参考:特定のマイホームを買い換えたときの特例

    なお、特定の居住用財産の買換えの特例は、譲渡所得に課税するタイミングを将来に先送りするものであって、税金が控除されるわけではありません。

    将来、マイホームを売ったとき、あるいはマイホームを相続した子や孫が売却したときに課税されることになります。のちのち自分や子、孫が後悔しないためにもしっかり検討したうえで利用するかどうかを判断したほうがいいでしょう。

    併用できる特例

    マイホームの売却、買換えには、このほかにも「居住用財産(10年超所有)を譲渡した場合の課税の特例」「居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」「住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)」などの特例があります。

    それぞれの詳細は後ほど説明しますが、これらの特例には併用可能なものと不可のものがあります。下記にまとめたので参考にしてください。

    特例制度の併用
    制度 併用可能な制度
    A 3000万円の特別控除 C
    B 特定居住用住宅の買換え特例
    C 10年超所有軽減税率の特例 A
    D マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算
      及び繰越控除の特例
    E
    E 住宅ローン控除 D

    (2)税率をかける

    譲渡所得税は、ここまで説明した計算式で求めた譲渡所得に税率をかけて算出します。

    ポイントは、不動産を所有していた期間によって税率が変わること。これについては、次の項で詳しく説明しましょう。

    損しないためのポイント「5年を超えると税率が低くなる」

    不動産を売却した場合にかかる税金は、知らないと「損をする」場合があります。

    損をしないため大きなポイントが、所有期間によって税率が変わることを知っているかどうかです。

    すでに触れましたが、所有期間が「5年以下か、5年超か」で譲渡所得にかける税率が異なるからです。

    ちなみに、所有期間は、実際に所有していた期間ではなく、売った年の1月1日現在で、所有期間が5年以下であれば短期譲渡所得、5年を超える場合は長期譲渡所得となるので注意が必要です。

    所有期間と税率の関係は以下の通りです。

    居住用住宅の譲渡所得の税率
    区分 所有期間 税率
    短期譲渡所得 5年以下 39.63%
    (所得税・復興特別所得税:30.63%、住民税:9%)
    長期譲渡所得 5年超 20.315%
    (所得税・復興特別所得税:15.315%、住民税:5%)
    10年超所有
    軽減税率の特例
    ①譲渡所得金額
    6000万円以下の部分
    14.21%
    (所得税・復興特別所得税:10.21%、住民税:4%)
    ②譲渡所得金額
    6000万円超の部分
    20.315%
    (所得税・復興特別所得税:15.315%、住民税:5%)

    売却を検討している場合、あと少しで所有期間が5年を超えるのであれば、ちょっと待ってから売却することで、適用される税率が下がり税金をぐっと押さえることができるかもしれませんよ。

    所有期間5年超の長期譲渡所得の場合

    土地や建物を売却した年の1月1日の時点で、所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」になり、税率は20.315%(所得税・復興特別所得税:15.315%、住民税:5%)となります。

    所有期間5年以下の短期譲渡所得の場合

    土地や建物を売却した年の1月1日の時点で、所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」になり、税率は、39.63%(所得税・復興特別所得税:30.63%、住民税:9%)となります。

    所有期間10年超のマイホームを売ったときの軽減税率

    所有期間が10年を超えるマイホームを売却した場合には、譲渡所得6000万円以下の部分について税率がさらに軽減される特例があります。

    譲渡所得6000万円以下の部分は税率が14.21%(所得税・復興特別所得税:10.21%、住民税:4%)となります。6000万円を超える部分は、長期譲渡所得と同じで税率は20.315%(所得税・復興特別所得税:15.315%、住民税:5%)です。

    なお、10年超所有軽減税率の特例は、「居住用財産の3000万円の特別控除」との併用ができます。取得価格がわからない都心にある先祖伝来の不動産を売却し、譲渡所得が高額になった場合などには上手に活用して賢く節税したいものですね。

    売却損が出た場合の譲渡損失の損益通算・繰越控除

    マイホームを売却したものの、購入時よりも低い価格で売却せざるをえず、譲渡損失が出る場合もあります。

    譲渡損失には所得税や住民税、復興特別所得税がかかりませんが、その年の給与所得などと相殺して、所得税や住民税を減らすことも可能です。これを損益通算と呼びます。

    売却した年の給与所得などよりも譲渡損失が大きい場合には、翌年以降の所得からも差し引ける「繰越控除」を利用できる場合もあるので、知っておいて損はありません。

    なお、利用するには確定申告をする必要があります。

    売却で損失が出た場合の譲渡損失の損益通算・繰越控除

    売却した年の1月1日の時点で所有期間5年超のマイホームを売却し、譲渡損失が生じた場合には、譲渡損失の損益通算・繰越控除ができます。

    これは、譲渡損失を給与所得などと損益通算することで、課税される金額が減少することで納税額が減少し、給与所得などで課税されていた所得税が戻ってくるというもの。

    1年で控除(損益通算)しきれなかった場合、控除しきれなかった金額は翌年以後3年内に繰越して控除(繰越控除)することが可能です。

    売却で損失が生じた場合の譲渡損失の損益通算・繰越控除は、居住用財産を買い換える場合と買い換えない場合の2つのパターンがあります。それぞれの内容を見ていきましょう。

    マイホーム「買換え」で損失が生じた場合に使える特例と適用要件

    マイホームを買い換えた場合に適用できる特例です。これは、「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」といわれるものです。

    適用要件の主なものは、

    • 譲渡資産は自分が住んでいた所有期間が5年超の居住用財産(マイホーム)であること
    • 以前に住んでいたものである場合は、住まなくなった日から3年目の12月31日までに譲渡すること
    • 買換資産は譲渡の年の前年の1月1日から譲渡の年の翌年12月31日までの間に取得すること
    • 買換資産である住宅の床面積が50㎡以上であること(日本国内にあるもの)
    • 買換資産を取得した年の翌年12月31日までの間に居住すること
    • 買換資産を取得した年の12月31日において返済期間10年以上の住宅ローンを有すること
    • 売手と買手の関係が、親子や夫婦など特別の関係でないこと
    • 合計所得金額が3000万円を超える年は繰越控除を受けられない

    などがあります。

    この「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」と住宅借入金特別控除は併用できます

    売却の年及びその前年以前3年内における資産の譲渡の特例(居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例、居住用財産の3,000万円特別控除、居住用財産の買換え特例など)を受けている場合などは、適用されないケースがあります。

    過去に特例を受けたことがある場合には事前に税理士へ相談したほうがよいです。

    「住宅ローンが残っているマイホーム」を売却して損が出た場合に使える特例と適用要件

    住宅ローンが残っているマイホームを売却して、譲渡損失が生じた場合に適用できる特例です。

    これは「特定の居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」といわれるものです。

    先ほどの「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」との違いは新たにマイホームを購入せず、賃貸住宅や実家に住む場合でも利用可能であることです。

    主な適用要件は先ほどの「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」と同じですが、住宅ローンの債務残高を下回る金額で譲渡した場合にのみ適用されることに注意が必要です。

    詳細は、国税庁のタックスアンサー(よくある税の質問)で確認してください。

    参考:住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき

    この特例の適用にあたっても、売却の年及びその前年以前3年内における資産の譲渡の特例(居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例、居住用財産の3,000万円特別控除、居住用財産の買換え特例など)を受けている場合などは適用されないケースがあります。

    過去に特例を受けたことがある場合には事前に税理士へ相談したほうがいいですね。

    事例別!税金の計算シミュレーション

    不動産の売却にかかる税金についての基礎知識を押さえたところで、さまざまなケース別にどのような税金がどのくらいかかるのかを見ていきましょう。

    • 事例1「10年前に取得した中古マンションを売却する場合」
    • 事例2「マイホームを売却して損失が出た場合」
    • 事例3「相続不動産を売却する場合」

    事例1「10年前に取得した中古マンションを売却する場合」

    Q.10年前に取得した中古マンションを売却しました。
    譲渡所得税の計算方法を教えてください。

    (譲渡の内容)
    譲渡価額          1億3,000万円
    譲渡費用(仲介手数料など)  700万円

    (取得時の内容)
    取得価額 1億2,000万円(うち土地9,000万円)

    〈減価償却費の計算〉

    居住用マンションの減価償却費は、

    減価償却費 = 建物購入価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数

    で計算されます。

    また、鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造の居住用マンションの償却率は0.015となります。

    取得金額1億2000万円のうち、土地部分は9000万円ですから建物の価格は3000万円になる計算です。

    ここから、この中古マンションの減価償却費は

    3,000万円×0.9×0.015×10年=405万円

    と計算されます。

    〈不動産の取得費の計算〉

    建物の価格は3000万円、減価償却費が405万円であることから建物の取得費は

    3,000万円 - 405万円 = 2,595万円 となります。

    また、土地の取得費は9000万円であることから、土地と建物の取得費は

    9000万円 + 2,595万円 = 1億1,595万円

    となります。

    〈譲渡所得の計算〉

    次に、譲渡所得を計算していきましょう。

    譲渡価額は1億3,000万円、譲渡費用は700万円です。

    1億3000万円 -(1億1,595万円 + 700万円) =705万円

    となり、譲渡所得は705万円であることがわかります。

    このマンションは、居住用不動産なので「居住用財産の3000万円特別控除」を適用することができます。

    705万円は3000万円よりも少ないため、譲渡所得はゼロとなり、譲渡所得税はかからないことになります。

    事例2「マイホームを売却して損失が出た場合」

    Q.25年前にマイホーム取得し居住していましたが、2020年にその建物と敷地を2,000万円で売却。

    新たに住宅ローンを利用して新築のマイホームを購入しました。売却したマイホームの取得費は3,500万円、譲渡費用は100万円でした。 なお、譲渡した年の給与所得は500万円とし、翌年は550万円、翌々年は600万円とします。

    このケースでは、マイホームを売却して買換えていることに加え、売却をして譲渡損失が出ていることから「居住用財産の買換えの場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」を適用することができます。

    〈譲渡損失の計算〉

    では、譲渡所得(損失)と、損益通算の効果を見ていきましょう。

    住宅の取得費は3500万円、譲渡費用は100万円、そして譲渡価格は2000万円です。

    ここから計算式は

    2,000万円 – (3,500万円 + 譲渡費用100万円)  = 1,600万円

    となり、譲渡損失は1,600万円であることがわかります。

    〈繰越控除の効果〉

    譲渡した年(2020年)の給与所得は500万円、翌年は550万円、翌々年は600万円です。1年だけでは譲渡損失を控除しきれないため、2021年、2022年と繰越控除を行うことができます。

    2020年  500万円 - 1,600万円=  繰越損失▲1,100万円

    所得税はゼロとなり、控除しきれない1,100万円は翌年へ繰越されます。

    2021年  550万円 -1,100万円=  繰越損失▲550万円

    この年も所得税はゼロとなり、控除しきれない500万円は翌年へ繰越されます。

    2022年  600万円 - 550万円=  課税所得50万円

    この年は所得税が課税されるものの、課税所得は50万円となり、所得税をかなり抑えられることになります。

    事例3「相続不動産を売却する場合」

    昨年相続により取得した土地建物を譲渡しました。

    (相続税の申告内容)
    相続により取得した財産  1億円(うち土地建物の価額3,000万円)
    納付した相続税額     800万円

    (譲渡の内容)
    譲渡価額                 5,000万円
    取得費(購入価額不明のため譲渡価額の5%)  250万円
    譲渡費用(仲介手数料等)          100万円

    相続により取得した土地建物は被相続人が5年超保有していたとする

    〈取得費に加算する相続税額の計算〉

    相続開始の日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに、相続で取得した不動産を譲渡した場合、取得費に一定の相続税額を加算して譲渡所得の計算を行うことができます。

    取得費に加算する相続税額は次の算式によって計算されます。

    相続税額の計算式

    このケースでは、相続で取得した財産は1億円、このうち土地建物の相続税課税価額は 3,000万円、納付した相続税額は800万円です。ここから取得費に加算する相続税額は

    となります。

    〈譲渡所得の計算〉

    次に、譲渡所得を計算します。

    譲渡価額は5,000万円、取得費は購入価額がわからないため、譲渡価額の5%にあたる250万円 と、ここに上記の240万円と、譲渡費用(仲介手数料)100万円を加算して計算します。

    5,000万円 -(250万円 + 240万円+ 100万円)= 4,410万円

    となり、譲渡所得は4,410万円であることがわかります。

    〈譲渡所得税額の計算〉

    相続で取得した財産の取得時期は、被相続人が財産を取得した時期となります。

    そのため、この土地他建物が5年超所有の「長期譲渡所得」で、復興特別所得税を含む譲渡所得税率は20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)です。

    ここから譲渡所得4,410万円に対する譲渡所得税

    所得税 4,410万円×15.315% = 675万3,900円

    住民税 4,410万円×5%    = 220万5,000円

    譲渡所得税は、895万8,900円となります。

    【まとめ】正確な税額が知りたい場合はプロに相談しましょう

    ここまで見てきたように、不動産売却にかかる税金は、利益が出た場合や損失が生じた場合、不動産の所有期間などによってかかる税率や使える特例などが異なります。

    また、先祖伝来の土地家屋を相続したものの、取得価格などがわからず、自分では売って得た利益(譲渡所得)などを計算することが難しい場合もあるでしょう。

    とはいえ、大切な不動産を売却する以上、損はしたくないもの。正確な税額を知りたい場合には、やはり税理士など不動産の売却に詳しいプロに相談するのがよさそうです。

    監修者

    末廣 日出則(すえひろ ひでのり)

    税理士

    岡山県岡山市出身、昭和44年生まれ。上場食品メーカーの経理部、企画開発部を経て、ベンチャー起業へ転職しIPOを担当。
    これらの経験を活かすため税理士試験を受験し、平成19年税理士試験合格。
    都内の税理士事務所2ヶ所で実務経験を積み、平成22年4月「末廣日出則税理士事務所」を新宿区西新宿に開設。法人業務を中心に、近年は相続をはじめとする個人・資産税業務に力を入れ、個人から法人まで幅広い分野に対応している。
    ■Webサイト
    末廣日出則税理士事務所
    https://www.suetax.com/

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