公正証書作成にかかる費用と必要手続きを徹底解説
2018年 07月 02日 06: 46
相手にお金を貸したのに返してもらえないときどうしますか?解決方法として、一般的には裁判をする、ということが挙げられます。
しかし、裁判には多くの費用と時間がかかります。
結果、裁判をためらい泣き寝入りとなるケースはたくさんあります。
そのようなとき、裁判を経ることなく、相手に強制執行できる効力をもつのが「公正証書」です。
今回は、そんな公正証書についてみていきます。
この記事でわかること
公正証書とは?
公証人とは、法務大臣から任命された裁判官、検察官、法務局長、弁護士などを長年つとめた人を指します。
このコラムでは、公正証書の①「効力」、②「作成方法」、③「種類」について説明していきます。
公正証書の効力
公正証書には、通常の契約書や遺言書などよりも強い効力を持ちます。
大きく分けて、①証明力、②執行力、③安全性、④事実上の効力があります。
①証明力
そのため、公正証書の内容が裁判で否認されたり、無効とされたりする可能性はほとんどありません。
大きく分けて裁判においては二つの証拠力があります。
裁判においては、本当に作成名義人が作成した文書なのか、ということが問題になります。当然のことですが、偽造された文書を裁判官は信用してくれません。
これに対し、訴訟のルールが規定されている民事訴訟法(228条2項)には、公務員が職務上作成したものと認められる文書は、真正に成立した公文書であると推定する、と定められています。
公証人は準公務員という立場になります。
つまり、公正証書は、真正に成立した公文書であると推定されるのです。
推定されるということは、相手方がその推定を覆す証拠を出さないといけないことになります。
このように公正証書には形式的な証拠力が認められています。
真正に成立した文書である、すなわち、本当に作成名義人によって作成された文書であると認められると、次に文書の内容が真実であるかが問題になります。
残念ながら、公正証書の内容を真実であると推定する法律上の規定はありません。
公正証書に限らず、あらゆる文書において、その内容が真実であるか否かの判断は、裁判官が自由に判断することができます。
もっとも、自由といっても、その判断は提出された証拠に基づいて合理的に下されます。
そういったことを考慮すると、公正証書は法律のプロとしての長い経験をもつ公証人によって作成されるので、その内容は真実を反映していると捉えられるのが通常です。
結果、裁判官はかなりの信用性をもって公正証書の内容を評価します。
このように公正証書には実質的な証拠力も認められているのです。
②執行力
上記のように、公正証書は信頼性が高いため、例えば、金銭債務においては、強制執行できる旨の条項を定めておくことで、強制執行の申立が直ちに行えます。
その場合、相手方が金銭債務を履行しないときは、訴訟を起こさなくても不動産・動産・給料などの財産を差し押さえる強制執行が可能となり、債権を取り立てる事ができます。
本来であれば、強制執行をするためには、裁判所に訴訟を提起し、勝訴の判決を受け、確定されなければなりません。
もちろん、裁判にはある程度の時間や労力、費用などの負担を要します。
さらに、相手が破産するなど経済的に破綻してしまったら、差し押さえが不可能になる危険があります。
そういった意味では、公正証書の持つ執行力は、「裁判をせずに差押えできる」という点で、債権保全においてとても強い威力を発揮します。
③安全性
あらゆる文書には改ざんされたり偽造されたりする危険性があります。
これに対し、公正証書は公証人が責任をもって作成するので偽造されることはありません。
また、作成された公正証書の原本は、公証役場で20年間保管されるので、改ざんや変造の心配もありません。
万が一、交付された正本や謄本が紛失や盗難、破損などしても、再交付を受けることも可能です。
④事実上の効力
以上のように、公正証書には様々な強力な効力があります。
当事者双方に履行の厳守を促すことができます。
そうすることで、不払いや約束違反など、不履行の生じる危険を最小限にすることができるのです。
法律上の効力だけでなく、このような心理的な効果は極めて重要です。
公正証書の作成方法
公正証書は、全国に約300か所ある公正役場にて、手続きを経ることで作成することができます。
大きく分けると、
まず、大前提として、公正証書は当事者双方の合意が必要です。
双方に争いのある状況では公正証書は作成できません。
公正証書の作成方法ですが、当事者間で作成した契約書などの文書に公証人から印鑑をもらうというイメージで誤解されてる場合がありますが、公正証書は、あくまで公証人が作成する公文書です。
そのため、公証人がその場で契約内容を聴取し作成します。
このように、公正証書はあらかじめ作っておいたものがそのまま認められることがないため、公証役場へ出向く際は、あらかじめ法的に吟味された、公正証書作成原案を提出することが肝要です。
なぜなら、当事者が、法的にどのような内容の合意をしているのかを公証人に正確に伝える必要があるからです。
公正証書作成の必要書類
公正証書を作成する際には、必要な書類があります。
必要書類は以下の通りです。
当事者本人が出頭する場合には、
ⅱ パスボートと認印
ⅲ 住民基本台帳カード(顔写真付き)と認印
ⅳ 印鑑証明書と実印
代理人(弁護士など)が出頭する場合には、上記書類の他に本人の委任状が必要です。
委任状には、本人の実印が押印され印鑑証明書が添付されている必要があります。
なお、白紙委任は認められておりません。
委任状には、どのような内容の公正証書の作成を委任したのかが明確にされている必要があります。
また、公正証書作成には費用がかかります。
公正証書の費用
必要費用は以下の通りです。
ちなみにですが、目的の価額が100万円以下の場合は5000円です
・謄本取得費…1ページ250円×ページ数
・送達手数料…特別送達代(送達手数料1400円+切手代)・送達証明(250円)
・収入印紙代…金銭消費貸借契約や債務弁済契約、売買契約などの場合、目的物
基本的に以上の費用が必要になります。
一例をあげますと、目的価額が50万円で謄本が10ページの場合は
謄本取得費 .....2,500円(250円×10ページ)
特別送達代 .....1,400円
切手代 ............82円
送達証明代 .......250円
収入印紙代 .....1,000円(50万円以下の場合)
= 10,232円

最後に
このように公正証書には様々な効力があります。
いくつかの手続きは必要ですが、後に裁判になったときのことや、泣き寝入りして被る損害に比べたら、と思うと有効的に活用したいものです。
しかし、個人が公正証書作るにあたって、最初からから正確に手順を踏むのは難しいものです。
そのようなときは弁護士などに依頼することをおすすめします。
法律の専門家に依頼することで、公正証書に自分の記載してほしいことが思い通りに反映され易くなります。
また、公正役場での手続きを代行してくれるところもあります。是非ご検討ください。
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