住宅購入のトラブル回避!不動産の登記と登記事項証明書を徹底解説
2018年 06月 04日 06: 29
私たちの生活を送る上で、建物や土地は必要不可欠です。
必然的に、不動産の存在がまた必要不可欠になりますね。
新生活や自分の事務所を設立する際にも、拠点となる場所が大切になるでしょう。
しかし、中古住宅や他人の所有している建物を購入する場合、その不動産の真の所有者が取引相手と異なっているかもしれません。
また、抵当権を設定する場合は、他の誰かの権利が存在してないかを確認する必要があります。
そのようなときに、建物や土地の権利義務の関係を明らかにするのが登記制度です。
調べたい不動産を管轄している法務局から登記事項証明書を取得することによって、その不動産の権利関係を理解することが可能となります。
ここでは基本的な登記の性質や不動産の登記事項証明書の見方を詳しく見ていきます。
この記事でわかること
登記の特性・登記簿の区分
登記事項証明書を説明する前に、登記の持つ3つの効力について理解しておく必要があります。
その効力として対抗力、権利推定能力、形式確定能力が認められており、これらによって登記した者の権利を保護します。
対抗力
まず1つ目の対抗力は、主に二重譲渡問題の際に有効となる効力です。
なお、BはAに対し、債務不履行を理由に契約の解除と損害賠償請求を行う事ができます。
つまり、相手方が背信的悪意者・無権利者、不法行為者の場合を除き、登記がなければ所有権を第三者に主張することができません。
登記により第三者へと権利が主張できることを登記の対抗力と呼びます。
権利推定能力
2つめの権利推定能力とは、登記があるのならばその通りの権利が土地や所有者に対し当然に存在するだろう、と推定される効力です。
しかしながら、これはしばしば事実と異なる登記がなされている場合があります。
そのため、真の権利者による反証によって覆される場合もあるのです。
間違って登記を信じてそれにより買主が被害を被った場合であっても、原則として法務省が損害賠償請求に応じるわけでもなく、実際にその所有権を手にすることもできません。
このように不動産登記においては公信力が認めれていません。
権利推定能力とはあくまでも推定であって、内容と事実が一致していることまでは保証していないのです。
形式確定能力
3つ目の効力として形式確定力が存在します。
これは登記がある以上、仮に虚偽の物や無効であるにも関わらずそれ以降の登記手続き上の利害関係者は、その登記を無視して手続きを進めることができない、という効力です。
このような登記に記録されている事項の全部または一部を証明した書面を登記事項証明書と呼び、請求人は、利害関係がなくても手数料を支払うことによって、登記事項証明書の交付を請求することが可能になります。
また、管轄外における不動産についての登記事項証明書は、郵便での取得やインターネット上の「登記・供託オンライン申請システム」によっても請求を行うことができます。
登記事項証明書
登記事項証明書は、主として土地または建物の表示に関する登記がなされている表題部があり、その下に「甲区」と「乙区」に区分されている権利部が存在し、甲区には所有権に関する登記事項が、乙区には所有権以外の権利に関する登記事項が記録されています。
以下では表題部、権利部の甲区、乙区に記載されている内容について説明します。
登記事項証明書の表題部
登記事項証明書では、その不動産の権利関係についての情報だけではなく、所在や物理的・外形的な情報も提供してくれます。
このような当該不動産の物理的・外形的な状況を、登記事項証明書に記録した部分が表題部であり、表示に関する登記と呼びます。
この表題部は土地と建物で事項されている登記が異なります。
土地の表題部
土地の場合、主たる土地の表示に加え1.所在、2.地番、3.地目、4.地積、5.その他となっています。- 所在
その土地がどこに存在しているかを示し、大まかな土地の住所が登記事項証明書に登記されます。 - 地番
土地一筆毎に独自に振り分けられている番号であり、これによってその土地と別の土地を区別することが可能となります。
なお、地番がわからない場合には登記事項証明書が請求できない可能性があります。
そのため、登記事項証明書を請求する際には、事前に権利書や登記完了書、あるいは土地や建物を所在地の管轄の登記所の地図、市役所役場、住居表示対象住宅地図(発行していない地域もあります)によって確認をしておきましょう。 - 地目
対象の土地が何のために利用されているのかを表す事項です。
この地目は合わせて23種類あり、建物の敷地及びその維持若しくは効用を果たすために必要な土地は宅地として登録されます。 - 地積
対象土地の面積を表します。
しかしながら、この地積は常に正しいものであるとは限りません。
登記はその所有者の自己申請によって登録されるため、事実と異なる場合がしばしばあります。
そのため、土地を購入する際には登記事項証明書の地積を鵜呑みにせず、専門家に依頼し実際に測量を行うことにより、後々のトラブルを防止することができます。 - その他
表題部所有者の住所や氏名、登記を行った原因(理由)と日付と、実際に登記を行った日付が記載されています。
表題部所有者の欄に下線部が引かれている場合には、所有権保存の登記を行ったとされ、抹消されたという意味合いになります。
建物の表題部
建物は土地の表題部と似ている部分もありますが、異なる部分もやや存在します。建物の場合、主たる建物の表示に加え1.所在、2.家屋番号、3.種類、4.構造、5.床面積、6.その他となっています。
- 所在
土地の場合と異なり、基本的な対象建物の現住所に加えて、土地の地番まで記録されています。 - 家屋番号
一筆の土地における複数の建物を区別するために必要となる番号です。これは法務省が不動産登記法上によってつける番号であり、これによって対象建物を判断します。
仮に、現在土地に建物が一つしかない場合であっても、今後別の建物が建つ可能性があるので、建物には家屋番号が付けられます。 - 種類
対象建物が、どのような用途で使用されているかを表します。
この種類は、不動産登記規則および不動産登記事務取扱手続準則で37種類定められており、それ以外の建物については、一般社会において通用する用語により的確かつ合理的に定めることとなっています。
その一例として、居住・共同宿舎・店舗・事務所・倉庫…などが建物の種類として存在します。 - 構造
対象建物がどのような構成材料と屋根の種類、何階建てであるか、が記載されています。
建物の構成材料の代表的な例としては、木造や石造、コンクリートブロック造、鉄筋コンクリート造などがあります。
これにより建物がどのような状態であるのか、どんな素材から成り立っているのかを理解することができます。 - 床面積
対象建物の床面積を数平方メートル表します。複数階ある場合の建物については、階ごとの床面積が表示されています。 - その他
基本的に土地のその他の内容と同じものです。対象建物の現在所有者の住所や氏名・登記を行った原因と日付、実際に登記を行った日付などが同様に記載されます。
なお、区分建物つまりマンションの登記においては、まず初めにマンションの全体についての表題部が記載され、その後専有部分についての表題部が備え付けられています。

登記事項証明書の権利部:甲区(所有権に関する登記)
表題部に続く権利部では、主に対象不動産の権利関係が登記されています。
そして、権利部には所有権に関する記録がなされる「甲区」と、所有権以外の権利関係が記録されている「乙区」に分かれます。
最初に、甲区についての説明を行います。
甲区は、登記事項証明書の表題部の下に「【権利部(甲区)】(所有権に関する事項)」と記録されており、書かれている事項として1.順位番号、2.登記の目的、3.受付年月日・受付番号、4.権利者その他の事項が存在します。
- 順位番号
対象不動産において登記の申請が受け付けられた順番を示しています。
この欄には2や3といった数字が記されており、数字が若いほど登記が早くなされていたことを確認することができます。
また、仮登記が行われた場合、条件が整い本登記に改めると、仮登記がなされた時の順番で登記が確定されます。
仮登記とは、登記の申請をするために、登記所に提供しなければならない情報があるのに提供できない場合や、権利の移転等に関して請求権を保全しようとするときに、単独での申請が認められている登記です。
しかし、仮登記自体は対抗力を持っておらず、その効力としては順位の保全に留まります。 - 登記の目的
その対象不動産の所有権がどのような目的で登記がなされたかが記録されている欄になります。
主に新築建物の所有権保存や、売買・相続による所有権移転などの記録がなされます。
それ以外に、仮登記がなされている場合には所有権移転仮登記と表示され、この場合は下に余白があり本登記をするための欄があけられています。 - 受付年月日・受付番号
その登記が受け付けられた年月日です。
また、登記の申請が受け付けられると受付番号が付けられ、この受付年月日・受付番号は同じ欄に記入されています。 - 権利者その他の事項
不動産の所有権に関する記録がなされ、対象不動産の現所有者や過去の所有者を特定することが可能となります。所有者の住所や氏名、法人の場合は主たる事務所・名称が記録されます。
通常、所有権が移転するたびに新しい所有者の情報が記録され、甲区の最後に記録されている者が現在の所有者になり、
これを「登記名義人」といいます。
この欄には、所有者の名前だけではなく、登記の原因となった法律行為ー例えば、売買や相続などーやその事実も、日付とともに記載されます。
なお、対象不動産が共有所有の場合には、共有所有者の記録と持ち分についての記録も行われます。
登記事項証明書の権利部:乙区(所有権以外に関する登記)
不動産は利用価値の高い財産であるため様々な権利関係が発生しており、これらの権利についての情報が記録されているのが権利部乙区です。
不動産の乙区に記載されている権利関係は代表的なものとして、債務が支払われない際に担保としている不動産を競売にかけ代金から債務の返済を図る「担保権」と、他人が所有する不動産を使用するために必要な「用益権」があります。
そのため、対象不動産にどのような権利が存在するかを確認することは非常に大切です。
表題部から権利部(甲区)と続き最後に現れるのが、「【権利部(乙区)】(所有権以外に関する事項)」です。
乙区に書かれている主な事項として、1.順位番号、2.登記の目的、3.受付年月日・受付番号、4.権利者その他の事項となっています。
基本的には甲区と同様に権利の登記がなされた順番や日付が記録されていますが、甲区と比べ権利者及びその他の事項がより詳しく明記されています。
例えば抵当権などの担保権であれば、債務者の名前に加え担保される債権額や利息・損害金などが事細かに示されます。
また、登記がなされるにいたった原因も記録されています。
担保権の場合は、債務を保証するために設定されているので、債務の発生原因が記録されることになります。
抵当権の場合には順位番号が大切となります。
なぜなら、同一の不動産に数個の抵当権が設定されている際、優先弁済を受けられる順位は登記の前後によって決定するからです。
乙区の順位に関しては、原則として順位番号1番が2番に、2番が3番に優先することになります。
被担保債権が弁済等によって消滅すると、同時に抵当権も消滅する付従性も持っており、一番抵当権者が弁済を受けて被担保債権が消滅すると、付従性により1番抵当権も消滅されます。
その効力により2番抵当権が1番抵当権に、3番抵当権が2番抵当権に、と順位が繰り上がります。
なお、この抵当権や根抵当権の順位は抵当権者の合意があれば入れ替われることがあり、それは順位変更の登記により効力を生じます。
権利部乙区の下に共同担保目録が設定されている場合があります。
これはある債務を担保するためには1つの不動産だけでは不十分な場合に、同時に複数の不動産に担保権を設定したことを表示しています。
以上が登記事項証明書の解説になります。
不動産に関する取引は決して小さな取引ではありません。そのため、登記事項証明書を利用し、不動産の現所有者、対象不動産にどのような権利がなされているかをしっかりと確認していく必要があります。
登記の申請と登記が必要となる場合
では、実際どのような場合に登記が必要となり、どのような方法で登記の申請を行えば良いのでしょうか?表示登記が必要となる場合は以下の通りです。
- 建物を新築
- 表題登記のない建物を取得
- 新たに生じた土地を取得
- 表題登記のない土地を取得
- 土地・建物が滅失
- 土地の地目変更
これらの申請は法律上の義務として1か月以内に行わなければならず、登記の申請を行わなかった場合には10万円以下の過料を国に支払わなければなりません。
表題部所有者の氏名または住所についての変更の登記は、表題部所有者以外は申請することができず、申請の期間についての定めはありません。
その一方で権利部の登記は任意であるため、登記を行わなくても罰則はありません。
不動産を売買する際には登記によって利益を受ける登記権利者と、登記により不利益を被る登記義務者の双方の合意が必要となります。
このような事態を防止するために登記においては共同申請主義が原則となっています。権利者と義務者の双方が手続きに関与することにより、虚偽の申請を防止することが可能となるのです。
登記は共同申請が原則ですが、一部例外として登記権者が単独で登記を行うことができる単独申請が存在します。単独申請が行える例としては、所有権保存の登記や相続に寄る登記と合併の登記、登記名義人の氏名変更・更正登記、仮登記や表示に関する登記などが存在します。
そもそも、共同申請主義とは双方が不利益を生じさせないために規定されているので、上記の例のように単独で登記が可能な場合には単独登記して良いのです。

まとめ
以上が不動産の登記に関する事項となります。
登記事項証明書に記載されている内容は、どれも不動産にとって大切な事項であるので、理解をしていく必要があります。
また、不動産取引の際にも、登記事項証明書を利用することにより取引の安定性が確保できます。
しかし、実際に一人で登記を申請するのはそう簡単なことではありません。登記に関して不明なことがあれば、司法書士などに相談をしてみることをおすすめします。
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