不動産売買契約書で注意するべきポイントと契約成立までの流れとは?
2018年 07月 23日 09: 53
不動産契約を行う際には契約書が交付されますが、契約書は難しい不動産用語が多く書かれており、内容を理解しないまま契約を行ってしまうと、トラブルを招く恐れがあります。
例えば、「ペットを飼おうと思って契約したが、実はそのマンションがペット禁止だった!」などの対象不動産独自のルールも多く存在します。
そのため契約を結ぶ際には、契約書に書かれている内容をしっかりと理解することが大切です。
契約書の効力として、裁判での証拠や契約を順守する意識の向上、土地や建物を利用する上でのルールの明確化などが期待されます。
また、対象建物がどのような性質を持ち、どんな契約を行うかは買主にとって重要な問題です。
これらを説明してくれるのが重要事項説明なのですが、いったいどのような内容が記載されているか理解しにくい部分が多々あるのです。
そこで、今回は契約書の記載事項、実際の契約までの流れ、契約終結時に行われる重要事項説明について確認してみましょう。
この記事でわかること
契約書の必須掲載事項
- 「前文」
前文には、当事者の名前や契約の内容が簡素化して表現されており、一目見ただけで契約書の大まかな内容を把握することが出来ます。 - 「表題」
表題とは契約のタイトルを示します。
書き方などの規定は存在しませんが、誰が見ても契約内容が一目でわかるように、一般的でわかりやすい表現になっています。
- 「当事者の意思」
当事者の契約とは、契約の主体である当事者を示し、原則として契約により発生する権利義務の主体となるものです。
契約の当事者が個人である場合には住所と氏名、法人である場合は本店所在地の住所と法人名により、契約に関わる者を特定します。
契約事項中においては、事前に両当事者を以後『甲』『乙』で表記すると断った上で、それ以降の部分では甲・乙と略記されるのが一般的です。 - 「目的条項」
目的条項は第1条として、契約の主旨・目的や目的物の内容を具体的に記載します。
なお、この項目は前文に盛り込まれている場合もあります。 - 「契約の内容」
契約の内容は、その契約においてどのような債権が発生し、どんな債務を負うかといったことを記載します。
特約条項など、契約の中心になる部分から順に箇条書きにして記録されます。 - 「作成年月日」
作成年月日は、契約成立の日を証明する記載として大変重要なものです。
日付は、契約の有効期間を確定したり、正当な権限のもとに作成するかを判断する基準になります。
日付を公に証明しておきたい場合には、公証役場で確定日付をつけてもらうのが良いでしょう。 - 「当事者の署名」
当事者の署名には、本人の印鑑が押印されます。
当事者が個人であるならその住所を記載し署名・押印を行い、法人であるならば、本店住所・法人名を記載し、代表者が署名・押印を行います。
印鑑は、通常は何を使っても構いませんが、証明力を強くするためには市町村に登録してある印鑑で押印するのが望ましいでしょう。
不動産の賃借権では、物件の表示を記載して対象物件を特定します。
不動産を特定するために、登記簿に記載された物件の表示を記載して行います。
この表示が契約条項中に記載されてる場合もあり、物件の数が多い時は別紙として綴った物件目録に表記し、本文でそれを引用するという方法がとられます。
売買契約書には何が書かれているの?
売買契約書で注意しておくべきポイントは?
不動産の売買時には、重要事項説明の後に売買契約書が交付されます。
まず確認しておくべきことは、売主の住所・氏名や不動産の所有者が売主本人であるかを見ましょう。
次に、売買の対象となる不動産に関する所在地や面積、地目、法令上の制限などの情報を確認します。
売買契約書に書かれている事項で特に重要なものは、手付金の金額と効果、売買代金の金額と支払い時期、支払い方法や解約・違約金などです。
手付金とは、契約成立の証拠として相手方にいくらか渡すお金のことを指します。
民法では手付を交付したら、解約手付として推定され、手付を交付した買主が手付放棄を行えば、相手方に過失がなくても契約の解除が可能となり、その逆に手付を受け取った売主は手付倍返しを行えば、相手方に過失がなくても契約解除が可能となります。
その他、契約書には契約違反になった場合や、契約履行行為着手後の解約や違約金についての取り決めなどの重要な事項が記載されていますので、十分理解した上で契約書にサインをする必要があります。
売買契約書に記載されている主な事項とは?
以下では売買契約書に記載される主な事項を箇条書きで説明します。
- 売主・買主の氏名や住所
- 売買契約の対象となる不動産に関する諸情報。
その不動産がどのような場所にあり、面積や価格などが記載されています。 - 手付金や中間金についての取り決め。
中間金とは、売買契約が成立した後に、売買代金の一部として買主から売主へ交付される金銭のことです。
手付は契約の義務が履行されれば代金に充当されるのに対して、中間金は交付される時点ですでに代金の一部となります。 - 物件の引渡し時期や所有権移転に関する取り決め
- 登記する時期や登記費用負担などの登記に関する取り決め
- 契約解除と違約金についての取り決め
解除権には契約上の債務不履行や、対象不動産に瑕疵があった場合に、法律上当然に解除が認められる法定解除権と、当事者の契約により解除が認められる約定解除権が存在します。 - ローンの審査に通らなかった場合の、ローン利用時の取り決め
- 不可抗力による物件の被害に関する取り決め
- 損害賠償・違約金についての取り決め
債務不履行や隠れた瑕疵を発見した際に、買主は売主に対して法律上当然に損害賠償を求める事ができます。
ですがより明確にしておきたい場合には、当事者の契約によりあらかじめ損害賠償額を定めたり、違約金の定めを置くこともあります。 - 瑕疵担保責任に関する事項
対象不動産に瑕疵があった場合、買主は売主に対して、損害賠償や契約の解除を求めることが出来ます。
なお、この規定は当事者の契約である、適用を排除したり修正したりすることがあります。 - 保証人事項
- 公正証書の作成、確定日付
- 特約
賃貸借契約書には何が書かれているの?
賃貸借契約書と売買契約書の違い
賃貸借とは、賃貸人が賃借人に物を使用させ、賃借人が対価として賃料を支払う契約をいい、土地や建物を賃貸借する際にも、契約を行った証拠として賃貸借契約書が交付されます。
賃貸にあたっての契約書は、国交省の公表している賃貸住宅標準契約書がベースとして作成される場合が多いようです。

売買契約書と賃貸借契約書において、使用目的や目的物・契約の内容・作成年月日・署名押印・物件の表示など、大まかな記載は同じです。
しかしながら、賃貸借契約は建物や土地を購入する訳でなく使用・収益できる権利を得るだけであるので、存続期間や契約の解除、不動産を使用するにあたり定めた特別なルール——これを特約という——を詳しく定めなければなりません。
これらを契約書に記載することで契約内容がより明確になり、トラブルの発生を事前に防ぐ効力が期待されるのです。
そのため、賃貸借契約を結ぶ際には、特約までしっかりと確認することをお勧めします。
賃貸借系書に記載されいる事項
賃貸契約書には、以下の事項が記載されています。
- 当事者の氏名や住所
- 不動産の名称、所在地、面積、設備、付属施設などの賃貸不動産に関する事項
- 賃貸借の存続期間
賃貸借の場合には、存続期間を明記します。
存続期間の定めない時には、期間の定めのない賃貸借となりますが、借地権に限り存続期間が自動的に30年となります。
もし、地主側が契約の更新を拒絶したい場合には、正当事由のあることが必要です。 - 賃料・共益費・敷金などについてのとりきめ
敷金とは、将来賃借人が賃料を滞納する等、賃貸人に対して負うかもしれない債務を担保するためのお金を指します。
つまり敷金は貸主の立場からすると、一種の保険や担保のような性質を持つお金であるとしてとらえることが出来ます。
そのため本来契約が終了し、家賃の滞納が無い場合には貸主から借主へ全額返済されるはずですが、最近では室内の損傷や摩耗が生じた場合に、その費用を敷金から控除して返還されることも多いようです。 - 契約の解除・解約・消滅に関するとりきめ
法律上当然解除できるケースとしては、借主の無断転貸や賃借権の無断譲渡が挙げられます。
これらは貸主との信頼関係を裏切る行為であるため、解除が認められています。
しかし、判例では無断譲渡・無断転貸をした場合でも、背信的行為と認めるに足らない特段の事情があるときには契約の解除を行えないとしています。
なぜなら家や土地は生活の基盤であるため簡単に解除は行えず、多少の家賃の不払いや使用法法違反の事情があったとしても、そのレベルが信頼関係破壊のレベルに達していないと判断された時は、解除できないことになっています。 - 契約期間中の賃貸不動産の修繕に関する取り決め
元々、賃貸人は契約内容に従って対象不動産を使用収益させる義務を負っています。
そのため、不動産における修繕義務は賃貸人が負うことになっています。
不動産の修繕に関する費用は、使用収益に必要な費用である「必要費」と、価値を増加するために使われた費用である「有益費」が存在します。
これらの費用負担をどのようにするかは、契約書で明確に定めておくと、後のトラブルを防止することが期待できます。 - 連帯保証人などの保証人条項
- 特約
明け渡し時の原状回復義務や修繕費用負担などについてはは、特約が定められている場合があります。
原状回復特約とは、借主が撤去される際に、どの程度の修繕をするかについて定めた特約です。
原状回復特約によって、借主がどこまで修繕義務を負うことになるのかは、特約に記載された文言の内容によって変わってくる場合があるので、賃貸借契約を行う際には、どのような特約が定められているのかをしっかりと確認しておく必要があります。
通常、貸主の有利となる特約を盛り込むことが多いようですが、借地借家法や貸主に一方的に有利になるような消費者契約に反する特約は無効となります。
以上が賃貸借契約書に記載される主な事項になります。

契約成立までの流れとは?
実際に契約を行うまでの流れ
実際に物件を賃借するまでの流れはどのようになるのでしょうか?
まずは、大まかに自分がどのような物件を希望するかを明確に決定しましょう。
住みたい地域や部屋の広さ、周囲の環境・予算など自分の状況に合う物件をインターネット上での検索や新聞折り込み広告、不動産会社からの紹介など、候補物件を4~5個ほど挙げておくと良いです。
その後、実際に物件を自分の目で確かめておくことが大切になります。
インターネット上での説明や資料だけではわからないことも多く存在するので、モデルルームや現地見学を行い自分の希望に合う物件であるかを確認します。
希望する物件が確定した際には売り主である不動産会社か、販売代理をしている不動産会社に購入の申し込みを行います。
この時に利用する入居利用申込み書には、自分の情報や連帯保証人の情報などが記載されます。
入居利用申込み書は入居者の意思の確認であるため取り消すことも可能ですが、相手方にも迷惑がかかるため、軽はずみな行動はしないようにしましょう。
また家主・管理会社・不動産会社によっては、申込証拠金として家賃の1ヶ月分を求められることがありますので事前に用意しておきましょう。
そして、貸主が入居希望者の収入による家賃支払い能力や連帯保証人の安定性などをチェックした後で、早くて2~3日遅くて1週間程度で結果が出ます。
審査の結果、貸主の判断で、入居申込者と契約を結ばないこともあるようです。
無事審査が通ったなら契約へと進みます。
重要事項説明とは
重要事項説明とは
無事入居許可が下りたところで、契約準備が整ったら正式に契約を結ぶことになります。その際に購入の申し込みをした不動産会社の宅地建物取引士から、対象不動産に関する重要事項の説明を受けます。
重要事項説明とは宅地建物取引士の独占業務であり、その不動産がどのような性質や法令に基づく制限を受けているなどの事項や、契約はどのように行われるかなどが説明が行われます。
重要事項説明は売買契約と賃貸借契約の両方で行われ、仲介業者から説明と重要事項説明書の交付がされます。
もし、重要事項説明で納得いかない部分や、問題点が明らかになった場合には、契約を断ることも可能です。
この場合には、既に支払った申込証拠金や手付金などは全額返金されることになります。
重要事項説明で気を付けておきたいポイント
賃貸借契約においての重要事項説明の中で特に確認しておくべき部分は、入居時に差し入れる敷金等の清算に関する事項などです。
この事項で、敷金の返還時期や差し引かれる金額について事前に確認しておきましょう。
重要事項説明書には、「代金、交換差金および賃借以外」に授受される金銭額及び当該金銭の授受の目的が記載され、実際の賃料などの説明は、まだ契約が決まる交渉段階なので項目には入っていません。
また、「ペットは飼えない」や、「転貸禁止」などの注意すべき禁止事項があれば仲介業者が説明してくれるので、聞き逃さないことが大切になります。
賃貸借契約ではその他に
- 法令に基づく制限の概要
- 建物建築の工事完了時における形状
- 構造等・建物の設備の設備状況
- 耐震診断の内容
- 当該建物が土砂災害警戒区域内か否か
- 契約期間及び更新に関する事項
- 用途その他の利用の制限に関する事項
- 管理の委託先についての説明などの建物に関して重要な事項が記載されます。
どれも対象建物についての大切な説明であるので、疑問があった場合には迷わず質問を行いましょう。
これらの説明に納得することが出来たならば、契約書に署名押印を行い契約完了となります。
まとめ

不動産取引は決して小さなものでなく、大きな金額や土地が動くので慎重に契約を行う必要があります。
そのためには契約書や重要事項説明が契約を終結するかしないかの判断基準となりうるので、しっかりと内容を把握しておくことが大切です。
また、ご自身が売り手側で契約書を作成する際には、弁護士をはじめとする専門家の助言を聞き入れながら売買契約書を作成する方が、契約上のトラブルなどに発展しづらくなります。
契約書の文言について不明な点がある場合には、弁護士などの専門家に相談してみることをおすすめします。
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