先日実家に帰省したところ、祖父からある相談を受けました。
- 祖父
- 骨董品をインターネットで売りたい。
祖父は骨董品愛好家なのですが、祖母から「邪魔だから処分しなさい」ときつく言われ続けたことで、しぶしぶ手放す気になったとのこと。
しかし、街の骨董品屋を呼んで見積もりを取ってもらったところ
- 骨董品屋
- 全部あわせて数万円ですね。
という衝撃的な言葉を受けて頭にきてしまったそうです。
そこで、インターネットを使えばせめてもう少し高く売れるんじゃないか、と思い相談してみたとのこと。
- 祖父
- ま、言ってみれば早めの遺品整理じゃな(笑)
- わたすけ
- 笑えない。
とはいえ、実際に数を見たらあまりに多いため、今回はテスト的に5品に絞って出品してみることにしました。
また、いざ出品する段になると、「あまり安い金額では売りたくない」と言い出したので、「最低落札価格」(入札が設定価格以下だった場合は落札が成立しない)をつけて出品することにしました。
要するに、ネットオークションを使って見積もりを取るに近い使い方ですね。
出品物紹介
ここからは、今回実際に出品してみた5品を紹介いたします。
- 岸駒作 猛虎之図
- 祖父
- 岸駒ってのは江戸時代の有名な画家やな。この時代の絵描きは本物の虎を見たことがなかったからみんな想像で描いてたんやが、その中でも岸駒は迫力のある虎を描くことから、「猛虎といえば岸駒」とまで言われていた画家じゃ。
ただ個人的にこの絵はあんまり気に入ってないから安くてもイイ。売るとしたら10万やな。 - わたすけ
- 結構いい絵だと思うけど、10万もするかなあ。
- 大津絵の描かれた皿
- 祖父
- 大津絵ってのはこういう風刺を含んだひょうきんな絵のことじゃ。普通は掛軸とかに描かれているもんやが、これは皿に描かれている。そこが物珍しくて気に入ったから買ったんやな。そうざらにあるもんじゃない。価値はないかもしれんが気に入ってる。20万円はついてほしいな。
- わたすけ
- 確かに変わってて結構好き。でも20万円はさすがに……。
- 狩野直信の鶴
- 祖父
- 何代目かは覚えてないが、あの狩野派の画家じゃ。たしか狩野永徳の父親やったと思う。それ以外はよく覚えておらんが、狩野派というだけでも値打ちはあるやろう。20万円くらいで売りたいな。
- わたすけ
- 狩野派って結構すごいイメージあったけど家にあったんだ。20万円……するかなあ……。
- 幕末三舟の書
- 祖父
- 幕末三舟といえばわかるやろう。幕末に活躍した、勝海舟、山岡鉄舟、高橋泥舟の三人じゃ。全員名前に”舟”がついとるやろ。この三人の書が揃ってるっちゅうのは珍しいんじゃぞ。ひとりひとりならいくらもあるやろうが、三人揃ってるのは珍しい。50万くらいはしてほしい。
- わたすけ
- あの勝海舟!すげー!でも50万円は高過ぎるような。
- 萬鉄五郎の油彩画
- 祖父
- 萬鉄五郎っちゅうのは大正の一流の画家やな。この画家の絵が好きで、14万で買ったのを覚えてる。まあこの作品はまだ鉄五郎が若い頃の作品で、有名になる前じゃから、そんなに値はつかんじゃろう。10万で売りたいな。
- わたすけ
- (萬鉄五郎でオークファンで相場検索したら7千円位から20万円くらいまでまちまちあるな…)
祖父による作品の解説はほとんど知らないことばかりで感心しきりでした。言い値で売れるかはともかく、正直ただのガラクタとの違いがわからなかったものが、すごい価値があるように見えてくるから不思議です。
しかし、今回の本題はいくらで売れるか、ということ。
はてさて祖父の目利きはいかに?
結果発表
出品の結果はダイジェストでお送りします。
- 岸駒作 猛虎之図
- 大津絵の描かれた皿
- 狩野直信の鶴
- 幕末三舟の書
- 萬鉄五郎の油彩画
……祖父の思惑もむなしく、かなり希望落札額よりは安い金額となってしまいました…。(お皿なんかは骨董品屋の見積もりよりも高かったようですが)
- 祖父
- そうか……そんな値段にしかならんか……そうか……。
しょんぼりしてしまった祖父。
しかし、この結果に満足している人もひとり存在したのです。
祖父の収集癖に呆れがちだった祖母、その人です。
- 祖母
- こんなガラクタが数万円でもお金に変わるっていうんならありがたいこっちゃ。
- わたすけ
- まあ、確かに家の人からしたらガラクタと変わらないもんね。
- 祖母
- それに家に置いてあってもどうせ押入れの肥やしになるだけや。それくらいなら、欲しいと言ってくれる人、値打ちがわかる人のところにあるほうがいい。
- わたすけ
- おっしゃるとおり。
- 祖母
- とにかく死ぬ前に整理してほしい。それだけ。
- わたすけ
- 反応がしにくいです。
おわりに
いかがだったでしょうか。
今回得た教訓をまとめると、以下のようになります。
- 骨董品を買うときは計画的に。特に家の人の許可はちゃんと取ろう
- 骨董品を売るときはネットオークションも視野に入れよう。骨董品屋よりも高い値がつくこともある
- とはいえ、本人の希望価格からガクッと下がる場合もあるので過度な期待は禁物
- 遺品整理は元気なうちにやっておこう。家の人に迷惑をかけてしまうかもしれません
以上、参考にしていただけましたら嬉しいです。
最後に、ネットに記事をあげると言ったら祖父から「こま(愛犬)も出してやってくれ」とよくわかっていないコメントを頂いたので、こまくんの写真でお別れします。
おしまい。