顔面積広めで失礼します。株式会社バーグハンバーグバーグのかんちと申します。みなさんは普段写真を撮るときにどのようなカメラを使っていますか?
スマホで十分!という方もいると思いますし、背景をぼかしたくて一眼レフカメラを持っている方もいらっしゃると思います。かくいう私もCanon EOS 60Dという一眼レフカメラを持っていました。
水没させましたけど。
さて、うちの会社では記事を書く仕事が多いため、取材で頻繁にカメラを使います。なのでいくつかカメラがあるのですが、メーカーも機種もバラバラでなんですよね。
ただほとんどの社員が率先して使うのはソニーのカメラばかりで、CanonやNikonのカメラはあまり人気がありません。個人的にはCanonのカメラを持っていたのでこの中ではCanon EOS Kiss7が好みなんですが……。
じつは最近、社内で「新しいカメラが追加で欲しい」という声が上がり始めました。そこで今回は写真を本業にしているプロカメラマンの方にカメラ選びのコツを聞くことにしました。
お話を伺うのはフリーのプロカメラマンである保田敬介さん!
保田 敬介
松濤スタジオ勤務後フリー
東京を拠点に撮影制作中。
2013年度写真新世紀 佳作
http://www.yasudakey.com
いい写真が撮りたかったら光に気を使おう
- かんち
- よろしくお願いします!うちの会社だと取材で使うことが多くて、撮影の対象となるのが食べ物や風景、そして特に人物が多いんですが…


- かんち
- こういう場合、どういうカメラを買ったらいいんでしょうか…?
- 保田
- まず前提として、性能のいい高価なカメラを使ったからといっていい写真が取れるとは限らないんです。
- かんち
- えっ、そうなんですか!? 値段が高ければ高いほど機能とかが増えて、いい感じの写真が撮れるのかと思ってました。
- 保田
- 確かに値段が高いカメラはセンサーも優れていて機能も豊富で賢いので、オートでもそれなりに綺麗な写真を撮ることはできると思います。かんちさんは写真撮るときに「光」を気にしたことはありますか?
- かんち
- 特に意識してないです。その場にあるものをそのまま撮る感じです。
- 保田
- 写真って日本語でいうと「真を写す」という強い言葉ですが、英語だと「Photograph」と書きます。「Photo」と「Graph」、これを直訳したら「光を描く」が妥当かなと。
- かんち
- おおっ!写真は光を描くといういこと!
- 保田
- なので、光をどう観るかによって写り方が全然変わってしまうんです。高価なカメラを使わなくても、光を意識して撮るだけで写りが全く変わりますよ。室内で人物を撮る場合、たとえば窓際の直射日光が当たる場所で撮れば陰影のあるコントラストが効いた写真が撮れますし、光が差している部屋の日陰ところで撮ればふんわり柔らかい雰囲気で撮れます。
- 保田
- ただ蛍光灯がある部屋は難しいんですよ。フリッカー現象っていって蛍光灯は東日本の場合、1秒間に100回、西日本では120回点滅してるんです。人間の目には分かりませんが。
- かんち
- あっ、それ知ってます。50Hz/60Hzの電源周波数に関係しているんですよね。
- 保田
- はい。そのため写真撮るタイミングによっては真っ暗に写ってしまうことがあります。その対策として昼間に屋内で撮影するとき僕は、無理に照明を使わず少し暗くても外の自然光を使って撮影することが多いです。
- かんち
- なるほど。人間の目に写るものがそのまま写るわけじゃないですもんね。光……意識してみます。
- 保田
- ではかんちさんが光を意識して撮れるか試しますね。一眼レフ入門機のCanon EOS Kiss7で僕のカメラを被写体にして撮ってみてください。
- かんち
- いきなりテスト!……わかりました。
- かんち
- どうですか?
- 保田
- 光意識しましたか?
- かんち
- …………(光を…意識…?)。
- かんち
- じゃあ今度は保田さん同じカメラで撮って見せてくださいよ。あっ、同じカメラ、同じ設定(オート)でお願いしますね!
- 保田
- いいですよ。
- かんち
- 電気消した!
- かんち
- お、おぉ……自分のと全然違う。カタログに載ってる製品写真っぽいですね。
- 保田
- 蛍光灯を消して、部屋がそれほど明るくなくても、こんな感じで撮ることができます。
カメラ選びについて
- かんち
- 最初の質問に戻るんですが、各メーカーから様々なモデルが出ていてどれを選べばいのか迷いますよね。まずメーカーはどれがいいとかあるんですか?
- 保田
- メーカーによって発色が違ったりコントラストに差があったり、写り方に違いがあるのは当然なのですが、そこの違いって後からレタッチで調整できちゃうんですよね。なので撮った時の写真の仕上がりよりも、カメラの操作のしやすさだったり、シャッター音の響きが好みだったり、そういう感覚的なところで選ぶといいと思います。カメラ屋さんや家電量販店でもいいので、とにかく納得行くまで色々な機種を触って感じることが大切です。
- かんち
- 僕もお店でCanon EOS 60Dの展示品を手に持ってシャッター下ろした時に、「よくわかんないけどなんかいいー!」みたいな頭悪そうな感じでCanonにしました。水没させましたけど。ちなみに保田さんはNikonのカメラですよね。
- 保田
- はい。僕は学生時代に初めてNikonのカメラを触ってから、ずーっとNikonを使ってます。それはNikonのカメラの操作に慣れているから、というのが理由です。なので初めて触った機種が別のメーカーだったら変わっていたかもしれません。
- かんち
- 同じメーカーだったらレンズも流用できますしね。会社にはNikonやCanon、Sonyのカメラがそれぞれあって、それらを共用で使っているので操作方法全部マスターしなきゃいけないんですよね。「あれ?連射への切り替えどうすんだっけ?」と戸惑っているうちにシャッターチャンス逃したりすることがありました。
- 保田
- それだと同じメーカーに統一するもの手ですね。操作方法も機種によって大きく違うということもないと思いますし、先ほど言ったようにレンズを使いまわせます。バッテリーだって型さえ合えば機種同士でシェアできますからね。
- かんち
- 個人的にはCanonのカメラに愛着あるのでCanonで統一したいですね……。
APS-Cとフルサイズの違いとは
- かんち
- カメラ選びしているとスペックのところに「APS-C」とか「フルサイズ」とか書いてありますよね。フルサイズのほうが値段が高いっていうのは知ってるんですけど、正直何が違うのか分かってないんです。どんな違いがあるんですか? 「コスプレイヤーの中には、フルサイズカメラじゃないと撮影拒否する人がいるらしい」…なんて話を聞いたことがあるので、 フルサイズの方が金持ちに見えてモテるんですかね?
- 保田
- 「APS-C」と「フルサイズ」の違いはセンサーの大きさです。詳しい解説は省略しますが、APS-C機に比べてフルサイズ機の方が光が集約するセンサーが大きく、それを大きく引き伸ばした時に、センサーが大きいほうが画素の密度が高いので画質がよくなります。
- 保田
- 一般的な写真の大きさであるLサイズやハガキサイズくらいだと、比較しても違いは分からないかもしれません。ただ、ポスターサイズくらいになると差が出てきますね。ちなみに渋谷駅周辺のビルに貼ってある巨大広告などのサイズになると、フルサイズよりもさらに大きい「中判」や「大判」と呼ばれるカメラが使われたりします。
- かんち
- なるほどー。APS-C<フルサイズ<中判……とセンサーが大きくなればなるほど細かいところまでくっきり写せるというこですね。さっきの話で出たコスプレイヤーは写真を拡大しても耐えうるきめ細かいお肌をしている自信があると。
- 保田
- まぁそういうことに……なりますかね?
- かんち
- ともかくうちの会社が取材で使う写真は、大きく引き延ばして使う機会がそれほど無いので大きいセンサーはいらなそうですね。
- 保田
- あともう一つAPS-Cとフルサイズの違いがあって、それは同じレンズで撮影した時にフルサイズのほうが広角で撮れますし、画角が一定の場合はフルサイズのほうがボケやすくなります。
- かんち
- おっ、室内の撮影が多いので広角で撮れるのはいいですね!
- 保田
- まぁAPS-C用の広角レンズもあるので、フルサイズじゃないと撮れないということはないです。ここらへんは予算に合わせて、といったところでしょうか。
レンズ選びについて
- かんち
- カメラを一つのメーカーに絞っても、レンズバリエーションが沢山ありますよね。シーンによってどういうレンズを買えばいいんでしょうか。
- 保田
- 僕が持っているレンズで説明しますと、広角で撮影できる広角ズームレンズ14-24mm、標準ズームレンズの24-70mm、遠くのものに寄れる望遠ズームレンズ70-200mm、小さいものに寄れる105mmマクロ、単焦点の50mmのレンズがあり用途によって使い分けています。最後の単焦点レンズの焦点距離は、標準ズーム24-70mmの範囲に入っているんですけど、標準レンズよりも綺麗に撮れるので持っています。あとは超広角に撮れる魚眼レンズというのもありますね。
- かんち
- 流石プロですね。ぶっちゃけこれら全部でいくらくらいしますか?
- 保田
- うーん、ここにあるカメラとレンズ合わせると余裕で100万円は超えます。
- かんち
- ください。
- 保田
- 話聞いてた?
- かんち
- ところでレンズってコレクター欲を刺激しませんか? 一眼レフカメラの初心者が2本目のレンズを買うと、次から次へと色んなレンズが欲しくなって買い揃えたくなってしまう「レンズ沼」って言う症状があるらしいんですけど、自分もまんまとその沼にハマって1年で3本レンズ買い足しました。
- 保田
- 結構周囲から「今こういうレンズ持ってて、こういうレンズ新しく買おうと思ってるんだけど……」といった相談を受けることがよくあります。でもその人が買おうとしているレンズが既に持ってるレンズで事足りることがよくあるんですよね。
- かんち
- あっ、もしかして18-135mmの標準ズーム持ってるのに17-50mmを買った自分は……
- 保田
- 完全にそれです!!
- かんち
- やっぱりー!! …ネットでレンズの評判見てたらついつい買ってしまいました。
- 保田
- 例えば、「撮影する対象が料理だけ」と決まっているなら単焦点のマクロレンズがいいと思います。お肉から肉汁があふれるようなシズル感を撮りたいなら、あると便利ですね。ただ一度の取材で人物を撮ったり風景を撮ったり、物を撮ったりしたいなら標準ズームのレンズがいいです。被写体の一瞬一瞬の表情を捕らえたいのにレンズを交換していては、その瞬間を逃してしまいますからね。
- かんち
- それでは広角ズームレンズだとどうでしょうか。
- 保田
- 広角レンズの特徴としては、風景だったら広がりや奥行きを際立たせることができますし、標準レンズで撮るよりも室内を広く見せることができます。ただ、このレンズを集合写真とかで使うと外側にいくにつれて人が横に伸びてしまい、端の人が太ったように写る可能性がありますので注意です。
- かんち
- これ集合写真で端のほうに立ってた僕なんですけど、もともと太っているので違いがわかりませんでした。
レタッチ加工
- かんち
- ところでプロのカメラマンって写真撮影したものをそのまま作品として使ってそうな勝手なイメージなんですけど、フォトショップなどの写真補正ソフト使うことってあるんでしょうか?
- 保田
- もちろんありますよ! むしろ補正する方が多いです。
- かんち
- へぇーそうなんですね。「俺はこの日この時この瞬間にすべてをかける!! ウォリャァァァッ!! パシャリ」みたいな感じだと思っていました。
- 保田
- まぁ、その瞬間瞬間を切り取るという意味では間違ってないです。ただレタッチ補正は撮影した写真をより感動的に仕上げるお化粧のようなもので、それとは別のお話ですね。
- かんち
- ほっほう。じゃあレタッチする前提で写真を撮ってるんですね。なにか撮る時にコツみたいなのあるのでしょうか?
- 保田
- まず僕は写真のデータはJPEGではなく、RAWデータで撮っています。
- かんち
- あっ、すぐSDカードがパンパンになるやつだ!
- 保田
- 写真データのサイズはJPEGに比べると圧縮していない分かなり大きいのですが、レタッチするときの調整できる色の範囲に圧倒的な差があります。ほかにも、撮影するときは露出を上げ過ぎないというのも後でレタッチする時のコツです。露出を上げると明るく撮ることが出来るのですが、白飛びといって色の境界線が分からなくなってしまったり、影が消えてしまったりすることがあるんです。

- かんち
- あっ、自分も経験あります。
- 保田
- 白飛びしてしまうと、レタッチするときに色がなくなってしまい、補正が難しいことがあるんですね。なのであえて撮影するときは露出を押さえて、少し暗めにして撮るといったこともしています。
- かんち
- 勉強になります。でも補正ソフトを使いこなせないとダメですよね…。今だとスマホでもタッチ一発で補正やフィルタかけていい感じの写真にできるじゃないですか? とくにInstagram(インスタグラム)なんかはカメラアプリの定番ですよね。
- 保田
- なんですか、この画像。
- かんち
- Instagramのキャプチャです。彼は中学時代の私です。
- 保田
- 突然北朝鮮のトップみたいなのが出てきてビックリしました。それにしてもInstagramを初めて触った時は衝撃的でしたね。それまで写真補正ソフト使ってトーンカーブをいじったり色調補正したりしていたのが、タッチ一発で加工できちゃうんですもん。
- かんち
- すごいですよね…。ぼくもいろいろな加工ソフトを使いこなして、いろんな国の後継者っぽい画像を作り続けます!
- 保田
- なんで?
まとめ
ということで今回はカメラ選びのポイントや撮影時に意識することなどを教えていただきました。まとめです。
新しいカメラがやってきた
ちなみにNikon D80はこちらの金額で落札されました。
8年前の機種なのに意外に高い! カメラの「ボディは消耗品、レンズは資産」というようにレンズの価値は下がりにくいので、ほぼレンズの価値だと思われます。これもいい第2のカメラ人生を歩んでほしいものです。
そして今回新たに買ったのがこちらのα7Ⅱ。まったく同じ機種を会社で1台持っていましたが、バッテリーやレンズの共用を考えて全く同じのをもう一台追加。これに慣れてしまえば、今後は操作性で悩むことはなさそうです。
このカメラで光を意識した良い写真をたくさん撮りたいですね。
最後に「光」を意識して撮った僕の処女作をご覧ください。
