ライブコマースとは、ライブ配信で商品紹介を行う販売形式で、近年は日本でも市場が広がりつつあります。
そんなライブコマースにも、近年ではAI技術が導入され始めており、ライブ配信の補助やデータ分析などさまざまな部分で活用されています。
この記事では、ライブコマースにおけるAI活用方法や日本でも使えるアプリなどをまとめました。
ライブコマースの使用とAI導入を考えている人は、参考にしてください。
ライブコマースとは
ライブコマースは2020年頃に始まった販売形式であり、近年のオンラインショッピング需要やSNSとの相性から人気を集めています。
ライブコマースの発祥や人気の理由について、確認していきましょう。
中国発の配信型オンラインショッピング!
ライブコマースとは、ライブ配信で商品を紹介してECサイト等での販売につなげていく販売形式です。
最初に中国で始まってから大流行しており、ほかの国でも市場を拡大していきました。
現在は主流な販売形式になりつつあり、AIの導入など発祥した当初にはなかった要素も増えてきています。
ライブコマースが人気になった理由
ライブコマースが世界的に人気を集めた理由は、以下のとおりです。
- コロナの影響で自宅のオンラインショッピングが主流になった
- SNSやインフルエンサーとの相性の良さから若者に注目された
- リアルタイムのやり取りがエンタメ的な魅力にもつながった
2020年頃に発生した世界的なコロナの流行から、巣ごもり需要が増加して、オンラインショッピングはより使われるようになりました。
そんな中で、ライブコマースはリアルタイム配信で実物の商品が確認できて、ライブ配信の楽しさも体験できます。
SNSを配信プラットフォームにしたり、インフルエンサーを起用して商品を紹介する点も近年の趣向と噛み合っています。
日本のライブコマース市場
ほかの国と比べると、日本はライブコマースが始まった当初、そこまで盛り上がりを見せませんでした。
しかし、以下のような大手企業では、ライブコマースが流行し始めた時期から自社サイトで導入しています。
- ユニクロ:UNIQLO LIVE STATION
- GU:GU LIVE STATION
- ファンケル:FANCL LIVE SHOPPING
- 資生堂:Find Beauty Live
- IKEA:イケアライブ
上記のライブコマースは2025年時点でも継続して配信されており、日本のライブコマースの成功例としてあげられます。
日本におけるライブコマース市場は2023年時点で約3,000億円と推定されており、市場は徐々に拡大中です。
動画やSNSを活用した販売が当たり前になりつつある現状で、ライブ配信は文字や画像では伝えきれない情報も実践的に伝えられます。
そのため、今後は日本のEC市場内でも、ライブコマースが主流になる可能性は十分あります。
AIでライブコマースができる時代!

ライブコマースは商品を紹介する人がライブ出演するのが基本でしたが、近年はAI技術を活用して人が出演しない配信も増えています。
ライブコマースとAIについて、国内外での現状や種類別の活用方法を確認しましょう。
AIで24時間配信ライブも可能になった!
近年のライブコマースでは、AI技術を導入するケースも増えており、配信中の機能補助や配信後のデータ分析などがより便利に行えます。
特に注目されているのは、出演者をAIで生成したアバターにして、配信中の喋りやコメント返信もAIで自動化するAIライブコマースです。
AIライブコマースの場合、体力や時間帯に関係なく配信できるため、24時間配信ライブも可能になりました。
中国市場で話題になったAIライブ配信
ライブコマースへのAI導入が話題になったのは、ライブコマースが発祥した中国です。
中国ではライブコマースが流行した後、深夜帯までライブ配信を行う販売者が出てきており、それがAIを活用した配信でした。
AIの導入により中国の販売者では、以下のようなメリットが発生しました。
実際に24時間配信した事例もあり、ほかの販売者がいない時間帯での集客に成功しています。
日本でも活用できる?AIライブ配信
日本ではライブコマースに限らず、AIを導入する企業は増えてきています。
しかし、AIライブコマースについては発展途上であり、AIを導入できるサイトやアプリも限られているのが現状です。
AmazonやYouTubeなど全世界に向けて発信するサイトでは、日本国内からもAIライブが行えます。
ライブコマース×生成AIの種類
AIは分析や生成パターンの違いによって、以下の3種類に分けられます。
- 識別系AI
- 予測系AI
- 生成AI
上記の3種類にはそれぞれの強みがあり、ライブコマースにおいても利用者の配信スタイルに合わせて適したAIが使用されています。
これらを組み合わせて使用する場合もあるため、3種類の強みを確認しておきましょう。
識別系AI
識別系AIとは、与えられたデータを分析して、成否の区別や特定のパターンに認識分類するAIです。
一般的には画像や音声の識別、テキストの解析を行う際に使用されています。
ライブコマースにおいては、主にライブ配信中のコメントを識別や解析して、自動返信などの反応を返す際に活用できます。
予測系AI
予測系AIとは、過去のデータからパターンを特定して、未来の出来事や傾向を予測するAIです。
一般的には、株価や気象予測など、不確定な情報を予測する際に使われています。
ライブコマースにおいては、主にライブ配信後のデータを収集して、今後の集客率や視聴者の傾向などを分析する際に活用できます。
生成AI
生成AIとは、既存のデータを学習して、指定された内容の新しいコンテンツを生成するAIです。
一般的には指定されたテキストや画像、音声を生成する際に使用されています。
ライブコマースにおいては、主にAIライバーのアバターや音声でオリジナリティのあるキャラクターを生成する際に活用できます。
AIが使えるライブコマースアプリ
日本でAIライブコマースが使えるサイトやアプリは限られていますが、将来性を見込んでサービスを提供するところはあります。
日本国内でも使えるAIライブコマースについて、プラットフォームを紹介します。
1.AnyLive
AnyLiveは、東京に本社を置くAnyMind Group株式会社が提供するライブコマースプラットフォームです。
YouTubeやInstagram、Amazonなどに連携しながら、ライブコマースができるマルチプラットフォームとして、
AnyLiveの特徴は、以下のとおりです。
- 24時間365日、時間制限なしででライブ配信が可能
- 一度の設定でAIライバーのスクリプト作成から視聴者コメントへの対応まで自動化
- 複数プラットフォームへの同時配信
- 多言語対応
- ライブ配信とクーポン配布などプロモーション施策と連携可能
- 購入データやコンテンツなどのデータを一元管理し、オペレーションと分析を行う
- 繰り返しの学習からスクリプトや配信の構成が改善されるサイクル
- データに基づいた提案を専用のコンサルタントが行う
- 世界45以上の国・地域から79万人以上のインフルエンサーとマッチング
- AIライバーとインフルエンサーの切り替えが可能
AIライバーの生成やコメント返信などの基本的な機能に加えて、プロモーションとの連携やインフルエンサーとのマッチングも行えます。
2.PinPonAI
PinPonAIは、東京に本社を置くPinPon株式会社が提供するインバウンド向けソリューションです。
提供元はライブショッピングアプリであるPinPonの運営を行っており、ライブコマースの実績に基づいてPinPonAIを開発しています。
PinPonAIの特徴は、以下のとおりです。
- テキスト入力のみでAIアバターによる配信動画を作成可能
- 人物写真や動画素材から150種類以上のオリジナルAIアバターが製作可能
- 42ヶ国語・600種の音声を選択できる
- 人間のように自然なコメントに自動返信が即座に行える
- 商品画像や背景が自由にカスタマイズできる
- まるごと支援によりライブ配信の企画や台本製作、ビジュアル設計を支援
- 配信アカウントを預かって配信運用代行にも対応
- ライブコマース運営に関わるアカウント準備や法人資格の対応をサポート
導入する際は1年の最低契約期間がある3種類の月額プランと、単発的にサービスを利用できるスポットプランがあります。
プラン | ライト | スタンダード | プレミアム | スポット |
---|---|---|---|---|
月額 | 10万円 | 20万円 | 40万円 | 都度 |
映像の年間生成量 | 300分 | 600分 | 1200分 | 都度 |
PinPon以外のショッピングサイトやSNSでも活用できて、導入後の支援も充実しています。
今後、ライブコマースでAIは活用できる?

ライブコマースにAIを導入するメリットはある一方で、日本の普及状況から今後も活用できるか不安に思う人もいるかもしれません。
ライブコマースにおけるAIの今後について、現状の分析や今後の課題を確認しましょう。
日本ではAIはまだあまり普及段階にない
AI技術について、日本でも話題にあがる頻度は増えましたが、一般的に普及しているとは言えない現状です。
ライブコマース自体が市場を徐々に広げている段階であるため、AIの導入が完全に普及するまではまだ時間がかかると推測されます。
しかし、AIを早めに導入しておくと、今後もAIを活用したライブコマースが主流になった際も慣れた状態で使用できます。
今後AIを使って期待できること
ライブコマースにおけるAI導入が普及した場合、ライブ配信に関連する作業が簡略化や自動化できます。
AIの導入後のイメージとして、期待できる活用方法を紹介します。
AIによる接客
AIを導入した場合、配信でAIアバターを設置しながら商品紹介の喋りやコメント返信を自動化できます。
接客を完全に任せられるため、喋るのが苦手な人でもライブコマースを始めやすくなります。
アバターの活用
AIアバターは顔出しをしたくない人にとっても、自分の顔を隠せる点で活用できます。
商品紹介は自分で行いながら、見た目は印象的なものにして、配信キャラクターとして成立させられます。
コメントの自動返信
AIを導入した場合、挨拶への返信や想定される質問に対して事前に用意した文章を返信するなど、コメントの自動返信ができます。
いきなり細かい内容を指定したコメントに返信するのは難しいですが、AIが学習を繰り返した場合、複雑な返信にも適応させられます。
コストカットとしての活用
ライブコマースAIを導入する場合、初期費用や月額料金はかかりますが、配信や分析の負担が減る分、コストカットが期待できます。
AIに任せた時間でほかの作業や宣伝を行えば、集客力やクオリティのアップにつながります。
AI活用の今後の課題
AI技術は日々進歩していますが、現状では不完全な部分もあり、活用する際に問題が発生する可能性もあります。
AI活用における今後の課題を理解したうえで、導入するか否かを判断しましょう。
AIの生成や予測の正確性
AI技術は発展しているものの、導入した直後はデータ収集が足りずに、細かい部分で粗が目立つ場合があります。
利便性やコストカットを優先して、画像やコメント対応が不自然になると、ライブコマースのクオリティを下げてしまいます。
AIを導入して安定するまでは、以下の項目を意識してみましょう。
- AIによる画像や文章の生成後は、自分で一度目を通す
- AIの予測はあくまでデータの参考として、本格的な予測は自身の見分も織り交ぜる
生成や予測を繰り返していくと、基本的にはAIの精度が向上して生成や予測も正確性が高まります。
AIライブコマース対応のショップサイトやアプリの増加
ショッピングサイトによっては、ライブ配信に限らず、AI全般の使用が禁止される場合があります。
AIの導入は一定の費用がかかるため、活用できる場所が限られていると費用に見合わない可能性も出てきます。
今後の市場拡大でAIライブコマース対応のアプリ等の増加も期待できますが、費用面が厳しい状態の販売者は、導入前によく検討しましょう。
生成AIの悪用や法律違反
AIは便利な一方で、使い方によっては悪用できてしまう点は大きな問題です。
特に生成AIは以下のような状況が発生する可能性があり、場合によっては景品表示法や著作権などの法律違反に該当します。
そのため、AIを導入する際は信頼できる開発元を選んで、正しい範囲で運用しましょう。
EC×ライブコマースを成功させるためには

ライブコマースにAIを導入しても、ライブコマースの基本を理解していない場合はうまく活用できません。
ECサイトでライブコマースを使うメリットや、具体的な活用方法を確認しましょう。
ECサイトのためにライブコマースを使うメリット
ECサイトを宣伝する方法としては、広告やSNSなど複数の選択肢があります。
そんな中でもライブコマースを使うメリットとしては、以下の項目があげられます。
まだ参入者が少ないため、ライバルが少ない
ライブコマースは日本で市場が拡大中ですが、参入者は少ないのが現状です。
しかし、今から始める人にとっては、ライバルが少ない状態は参入のチャンスになり得ます。
ライブコマースは一種の広告になることから、視聴者を集められるほうが有利であり、ライバルが少ない段階では視聴者の取り合いが発生しません。
今後の市場拡大も期待できるため、早めに参入でライブコマース市場での基盤が作れる点もメリットです。
日本での配信プラットフォームや媒体が増え始めた
ライブコマースが始まった当初は配信プラットフォームは少なかった日本ですが、近年は日本でも配信先が増え始めています。
特に近年はYouTubeやInstagramなど、動画サイトやSNSで気軽にライブ配信できる環境が整っています。
固定ファンをつかめる可能性もある
ライブコマースで配信を繰り返していくうちに、取り扱う商品や出演者に魅力を感じて固定ファンができる場合があります。
固定ファンができた際に想定されるメリットは、以下のとおりです。
直接的な販売数が増えなくても固定ファンの増加によって、新規視聴者の獲得や購入につながる可能性は十分あります。
若年層や別のターゲット世代にも注目してもらえる可能性がある!
ライブコマースは年齢や性別を問わず、気軽に視聴できるため、想定したターゲット層以外も集客できる可能性があります。
SNSと結びつきが強い点から、SNSの中心的な利用者である若年層は注目されやすい年齢層です。
上手く活用するためのコツ
ライブコマースは単に配信するだけだと、ECサイトへの集客や購入につなげられない可能性があります。
ライブコマースを上手く活用するためのコツとして、以下の3点を意識してみましょう。
ライブコマースとECサイトを必ずつなげよう!
ライブコマースで魅力的な商品紹介を行っても、購入先がわからない場合は購入を諦めてしまう人もいます。
ライブ配信内や概要欄の説明文、SNS等の告知で必ずECサイトの導線を張っておきましょう。
ECサイトと連携できるライブコマースの場合は、配信前にリンクが機能しているか確認してください。
アーカイブ機能をうまく活用しよう!
ライブコマースはリアルタイムのやり取りが魅力ですが、視聴者側も毎回リアルタイム視聴できるわけではありません。
ライブコマースが行えるサイトやアプリでは、基本的に配信後の動画を残せるアーカイブ機能が使用できるため、うまく活用しましょう。
興味がある商品やジャンルである場合は、アーカイブ動画でも十分視聴される可能性があります。
アーカイブを公開する場所についても、商品やターゲット層に合わせて視聴されやすいサイトやSNSを選ぶと視聴数を増やせます。
SNSで配信を広めよう!
ECサイトの誘導やアーカイブ機能でも書きましたが、ライブコマースではSNSでの告知が重要です。
ネットショップや自社サイトのみで配信の告知を出しても、普段からサイトを利用している人しかライブコマースを認知できません。
配信予定が決まった時点で、想定されるターゲット層に合うSNSの告知を複数回行いましょう。
固定ファンは事前に配信日がわかっている場合は、予定を合わせてくれる可能性があるため、早めの告知が推奨されます。
まとめ

ライブコマースにおけるAIの活用についてまとめると、以下のとおりです。
- ライブコマースが流行した中国でAIの活用が始まり、24時間配信が可能になった
- AIの分析や生成パターンの違いでアバターの作成やコメントの自動返信、データ分析が行える
- 日本ではAIを導入できるライブコマースが限られているが、サービス提供するところでは導入後のサポート込みで使用できる
- 今後のライブコマースの市場拡大した場合、AIの導入が有利に働く可能性がある
- ライブコマースはECサイトへの誘導やアーカイブ機能の活用でより効果的に宣伝できる
AIを活用したライブコマースでは、ライブ配信やデータ分析が自動化されて、より快適に商品紹介を行えます。

AIが許可されている配信プラットフォームでライブコマースを始める場合は、配信補助や分析を目的に導入を検討してみましょう。